「紅白」をとらえ直す。文化学園服飾博物館に約40カ国から「赤」と「白」の衣装が集結
-さまざまな国の”赤”と”白”-」が、文化学園服飾博物館で始まった。会期は2023年2月14日まで。
本展では、日本の着物、アジアやアフリカの民族衣装、ヨーロッパのドレスなど世界中の多種多様な衣服を通して、赤と白という色の持つ意味の共通点や相違点などを探ることができる。
会場は全6章で構成。1階の会場では「慶びと哀しみの赤と白」と「祈りの白」の展示を鑑賞できる。
日本の白無垢の展示から始まる「慶びと哀しみの赤と白」では、成年儀礼や婚礼、葬礼など日常とは異なる日に身につける衣服を展示。19世紀以降白色が定着したイギリスのウェディングドレスのほか、トルクメニスタンで婚礼の際に多用される赤色の衣装も展示され、色の持つ意味が多様であることが示される。
「祈りの白」では、日本の小忌衣など宗教的な権威を持つ人物が着用する衣装に加え、「神の前の平等」という意味から白色を用いるシリアの巡礼用衣服も紹介されている。
2階の展示室に上がると、「ステイタス・シンボルとしての赤と白」へと続く。赤や白はときにその素材の希少性ゆえ、身につける者の社会的地位や属性を示してきた。ステータスにおける色の役割を知ることができるセクションだ。
「コミュニティにおける赤と白」では、女性が未婚か既婚かを明示する文化から発達した衣服のほか、ドイツとフランスの領土争いが繰り広げられてきたアルザス地方においてフランス(カトリック)を表してきた赤いスカートが紹介されており、社会とともに発展した衣服のあり方を知ることができる。
「実用性のある赤と白」では、仲間を見つけやすく野生動物を遠ざけることから赤を用いるケニアのマサイ族の衣服や、日差しを吸収しにくいという理由から白色で統一された砂漠地帯の衣服などを通して、生活としての衣服において色が持つ物理的な効果を再認識させられる。
また、染料の紅花が血行を良くすると信じられていたことから赤く染められた日本の長襦袢や下着と、汚れが目立つという理由から衛生的な指標になるとして白色が採用された下着の対照性からは、場所や時代によって変わるもの・変わらないものがあることに気付かされる。
最終章の「華やかな赤、繊細な白」では、本展のメイン・ビジュアルに採用されている紅白のイヴニング・コートや、純白が可愛らしい印象を与えるディオールのデザイナーによるドレスなどを展示。情熱的で華やかなどのイメージを持つ赤と、清楚で繊細な印象を与える白が、着る人の内面を端的に表現する役割を担ってきたことが紹介されている。
会場の最後には、特別出品としてハリウッド映画の衣装が赤と白、一点ずつ並ぶ。衣装の色が、芸術作品に革新的な意味を与えてきたことを実感できる2つの衣装は、会場を訪れた人のみ知ることができる「シークレット」だ。
赤と白は、それぞれ固有の意味を付与されるとともに、古くからグループ分けなどに用いられてきた色でもある。本展を訪れたなら、この2色が隔ててきたものやその際に付与された意味、地域や時代を超えた共通点が見えてくることだろう。