京人 デジタル化で利便性向上 伊藤克尚・国立国会図書館関西館長
これまでも著作権保護期間が満了した資料約57万点を公開していたが、昨年の法改正(著作権法の一部を改正する法律)を受け、大幅に増えた。自身も東京本館では新サービス開始の準備などに携わってきただけに、「多くの方に利用していただきたい」と期待を込める。
関西館(京都府精華町)の事業の柱の一つが電子図書館事業。情報システム開発のほか所蔵する図書や雑誌をデジタル化して収集、提供する。
新型コロナウイルス禍で国会図書館も休館し、遠隔複写サービスも休止、全国の図書館の9割が閉館した時期があったものの、その期間が新サービス開始を加速させた側面も。「研究者らから声が多く寄せられ、デジタル化自体は2000年頃から進めてきましたが、今回、利便性が一気に進んだ。来年1月からは印刷機能も提供する予定です」
一方、絶版でも3カ月以内に復刊される予定があるものなどは対象外で、出版社など権利者の利益保護には気を配る。
「これまでは原本保存を目的に画像としてのデジタル化を進めてきましたが、次に中身のテキスト化作業に取り組んでいます。検索性が高まり、多くの人の目に触れることで埋もれていたものが発掘される。そんな期待もしています」
図書館はいわば人類の〝知のデータベース〟。その積極的な活用は国の産業発展にもつながるはずだ。
4月に着任し、初の関西暮らし。住まいの近くには東寺があり「そのたたずまいに歴史の重みを感じます」と笑った。(山上直子)
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いとう・よしたか 昭和41年、東京都清瀬市生まれ。平成元年に慶応義塾大法学部卒、2年に国立国会図書館入館。総務部副部長、利用者サービス部副部長などを経て、令和4年4月、けいはんな学研都市にある関西館長に就任した。