銭湯で初全裸、泣きながらシャワー イスラム教徒のバングラ男性自伝
マホムッドさんはバングラデシュの農村部出身。現地の短大を卒業後、先に日本で働いていた兄を頼って1994年に来日。日本語を学んだ後、千葉県の城西国際大人文学部を卒業した。現在はハクキンカイロ(大阪市)で輸出業務に携わるかたわら、府警のベンガル語通訳なども務めている。
来日後、風呂なしアパートに住んだマホムッドさん。銭湯に行ったものの、イスラム教の教えに忠実な故郷では、男性でも家族の前だろうと裸になることは考えられず、パンツをはいたまま浴場へ行こうとしたという。ところが番台のおばさんから「下着を脱いでから行くように」と指示され、非常に驚き、5分間悩んだ末に入浴した。
「いろんな感情があふれ、涙を流しながらシャワーを浴びた」と当時を振り返る一方で「それまでのプライドも一緒に流れ去って、新しい自分になった」と笑う。
大学卒業後も、労働環境やアルコール、女性を取り巻く環境など、両国の価値観や文化の違いに直面しながらも、努力した半生が率直につづられている。
コロナ禍で困窮した留学生支援に携わる中で、経験を本にするよう勧められ、本書を書いた。マホムッドさんは「この本が、異文化を理解することを、考えるきっかけになればうれしい」と話している。【柴山雄太】