生誕120年を迎える棟方志功の偉業を伝える展覧会が富山・青森・東京を巡回。
青森・富山・東京はそれぞれ、棟方の芸術家としての形成に影響を与えた土地だ。彼と各地域のつながりを軸に、板画(版画のこと。棟方は「板の生命を彫り起こす」という想いから、自らの版画を「板画」と称した)や倭画(肉筆による日本画のことで、読み方は「やまとが」。こちらも棟方自身が名付けた)、油彩画をはじめ、棟方が手がけた本の装丁や包装紙などのデザインも展示。さらには映画やテレビ、ラジオという時代特有の「メディア」出演など多岐にわたる活動を紹介し、棟方志功とはいかなる芸術家であったのかを再考する。
巡回展の皮切りは〈富山県美術館〉(3月18日~5月21日)。1945年に同県の福光町(現・南砺市)に疎開した棟方は6年間を過ごしたこの地で浄土真宗に触れ、版木が入手困難であることから筆や書の仕事が本格化。肉筆による倭画を描いている。巡回展には棟方の作品を常設展示する〈南砺市立福光美術館〉からも出品される。
続いては、棟方の出身地である〈青森県立美術館〉(7月29日~9月24日)。ゴッホの絵画に感動し、「ゴッホになる」と芸術家を目指した棟方少年は、青森市内でスケッチをしたという。青森市の初代名誉市民であり、1975年には〈棟方志功記念館〉も開館している。実は同館は建物設備の老朽化などの事情で、残念なことに2024年3月31日をもって閉館することが決定している。
〈棟方志功記念館〉の収蔵品は〈青森県立美術館〉に保管場所を移すことが決まっている。開館以来、青森が生んだ芸術家・棟方の偉業を後世に伝えてきた同記念館の活動は、拡張される専用展示室などで〈青森県立美術館〉に協力する形で継続されることになるだろう。