「転調のように小説書けたら」 芥川賞候補「##NAME##」の作家、作詞家の児玉雨子さん
第169回芥川賞候補に選ばれた新作『##NAME(ネイム)##』(河出書房新社)の主人公は、小学生時代から本名に近い芸名を使ってジュニアアイドル活動に励んでいた女性。過去の画像や動画をもとにした中傷や差別、児童ポルノを禁止する法整備なども描きながら、揺れ動く女性の心情を浮かび上がらせている。
自身、楽曲を提供する中で芸能界の話も耳にしてきたという。「普通にこの同じ世界にいる人たちだと書きたかったし、今の私は書ける立場にいる」と話す。
大人が未成年を搾取する構造の「闇」とともに、主人公が同じアイドルの友達と過ごした日々の輝きもつづる。作品を貫くのは属性や名前ではくくれない個の手触りを探るまなざしだ。「名前が良いことを導くこともあれば、人生の障壁になることもある。ただ個人として出会った友達の関係を書こうと思った」
神奈川県出身で、高校時代には初めての小説を書いた。「雨子」という筆名の由来は「初めて自分の小説を(新人賞に)投稿した日に雨が降っていたから。晴れだったら、晴子だったと思います」。飾らない自然体で、ジャンルの壁を自在に越えていく。