車椅子男性でもオシャレな「巻きスカート」、パリコレに参戦
JPFA代表の平林景さんは、かつて車椅子ユーザーから「障がいがあると、着たいものを着れない、諦めざるをえない」という声を耳にした。
例えば、デニム生地ボトムスを履く際には、強い力が必要になり、麻痺などを持つ人にとっては難しい。また車椅子の場合、フリルをひっかけてしまったり、車輪を漕ぎにくかったり、汚れやすくなる場合も多い。
そこで平林さんや仲間たちは、まったく新しい「着脱しやすく、オシャレ」な服を考案。試行錯誤の末、マジックテープで着脱容易にし、前後アシンメトリーで車椅子でも皺になりにくい、袴風の巻きスカートという、ユニバーサルでファッショナブルなボトムスを制作した。「すべての人にボトムを」という意味を込め、ブランド名を「bottom’all」とした。
デザインした服を平林さん自身が着用し、SNSに写真をアップすると大きな反響があった。コメントには「スカートは男性にとってもオシャレ」「障がいのある方に向けて開発されているけれど、こんなアイテムがあれば自分も嬉しい」などとあり、「障がいのある方のための活動」だからではなく「オシャレだから」という理由で拡散していったのだ。
平林さんは、パリで9月下旬から行われる「2023年春夏パリ・コレクション(パリ・ファッション・ウィーク)」期間に、現地で新作発表会を開催しようと決心する。
パリコレには公式スケジュールの他に、「オフスケジュールショー」と呼ばれる、新人デザイナーたちがパリ各地で行うものがある。
平林さんたちは「流行の発信地であるパリコレウィークにファッションショーを開催すれば、世界に流行を生み出せる。それを見た様々なアパレルメーカーが『誰もがオシャレを楽しめる』ファッションを開発していく可能性が高い」と考えたのだ。
開催費用を募るためクラウドファンディングを行うと、僅か30時間で目標額である300万円を達成。最終的には800万円以上の支援総額を達成した。
ファッションショーはパリ日本文化会館で行われ、オランダのプロ車椅子モデルや、各国のパラアスリート、国内オーディションで選考した車椅子モデルら10人がランウェイに登場。フックやベルトで、オシャレと車椅子使用での機能性を両立させたスカートや、両面ジッパーで麻痺があってもゆったり袖を通せる。ラメ感のある腰丈アウターなど多様な10点の新作を披露した。
現地のメディアや関係者、来場者たちからも「初めて触れた世界観」「新しい時代の到来を感じた」と好評だった。
平林さんは「世界を動かす0から1を創るために実施し、結果は0から0.1くらいだったかもしれない。けれどそのような感想を頂き、0.1でも間違いなく第1歩になったと感じた」と確かな手応えを感じたと言う。
今後は「大きな目標として、2025年の大阪万博でのコレクション開催を目指す」と語る。「雇用創出やイベント開催など、「次世代ユニバーサルデザイン(NextUD)を地域社会で根付かせるための活動も継続していきたい」と語る平林さん。
すでに縫製などを就労継続支援事業所に依頼し、大手量販店で販売するサイクルを生み出すプロジェクトが進んでいる。昨年末から3度ほど、高島屋での販売も行っている。なお今まで制作したものは、全て完売しており、当事者たちからも好評だ。
「障がいの有無に関わらず、誰もが魅力を感じるファッション。このデザインの魅力が、世界中に広がってほしい」と「次世代ユニバーサルデザイン」を広める平林さんたちの挑戦は、念願のパリコレを経てなお、まだ始まったばかりだ。
■Wheelchair Fashion Row(パリコレの動画あり) https://jpfa-official.jp/wfr/
■日本障がい者ファッション協会 https://jpfa-official.jp/
■平林景twitter https://twitter.com/KeiHirabayashi