いじめ解決に市役所が積極介入 全国が注目する「寝屋川モデル」の本気度
■情報入手後、すばやく対応
いじめ対策の寝屋川モデルが全国的に注目されるのは理由がある。同市は令和元年に市長部局の危機管理部に監察課(7人)を設置。毎月、全小中学校にチラシ約1万6000枚を配布し、学校以外にも市の監察課がいじめの相談や通報を受け付けていることを周知している。
被害者や家族、友人から学校経由やスマートフォンアプリなどで情報が入ると、翌日までに事実関係の調査に乗り出し、いじめられる側、いじめる側、保護者、教員らに面会し、いじめとされる言動を早期に封じている。
同市は令和2年に「子どもたちをいじめから守る条例」を施行。いじめについては児童らを明確に被害者と加害者に分けて間に入り、まずは平穏な状態に戻すことを主眼としている。
当事者間に関係修復が見えない場合には、市長が学校長に子供の別室指導や出席停止、クラス替え、転校などを勧告・助言できる権限を与えている。このほか、刑事や民事などの法的措置を取るケースを想定し、費用を30万円まで補助する制度も設けている。
■旭川市長も視察
市によると、いじめ事案は令和元年度172件、2年度169件、3年度183件に監察課が対応。1~4カ月間の確認期間を経て全件を終結させ、うち計6件について市長が勧告を行った。
広瀬慶輔市長は「寝屋川市はいじめを重大な人権問題として捉え、市長の権限と責任で子供たちが安心して学べる教育環境をつくる」と説明。「いじめ問題の99%は学校や教育委員会で解決できるが、複雑化・深刻化させないために、教育的アプローチと行政的アプローチで役割を明確にすることが重要だ」と強調する。
いじめに関しては平成25年に国や自治体などの責務を定めた「いじめ防止対策推進法」が施行されたが、初期の対応については従来通り学校と教育委員会に委ねられている。
教育現場では被害者、加害者ともに指導・支援の対象となるため、いじめをからかいや悪ふざけと軽微に評価しがちで、情報を校内にとどめておこうとする傾向がある。自治体トップも教育の中立性への配慮や批判を避けるため関与しにくい側面もある。
昨年3月に旭川市でいじめを受けていた女子中学生が公園で凍死して見つかる事件があり、真相解明に取り組む今津寛介市長は昨年12月に寝屋川市を視察に訪れ、「寝屋川市にならった制度導入を含めて条例づくりなどの検討を進めたい」と話していた。
寝屋川市には来春開設予定のこども家庭庁が管轄するいじめ対策として国からも問い合わせがあり、国会議員や他の自治体からも視察などが相次いでいる。
府内の教育関係者は「寝屋川市のような仕組みなら、学校もいじめを隠すことなく本来の指導や見守りに専念できる。子供にとっては先生とのトラブルも含めた相談の窓口が広がり、先生も保護者対応などの負担が軽減されるのでは」と話している。
■サミットは尾木ママも参加
12月3日のサミットは、教育評論家の尾木直樹氏、NPO法人プロテクトチルドレン代表理事の森田志歩氏ら教育関係者6人が「いじめ問題に対する教育的アプローチのジレンマ」をテーマに討論するほか、いじめ被害者の家族とも意見交換する。
また、いじめ問題の解決に地方自治体の長として乗り出している旭川市の今津市長、岐阜県可児市の冨田成輝市長、大阪府八尾市の大松桂右市長、寝屋川市の広瀬市長らが「いじめゼロに向けた新たなアプローチの必要性」について討論し、4市長で「共同宣言」を発信する予定だ。
サミットは午前11時~午後4時半、寝屋川市立市民会館。参加無料。申し込みは不要だが、満席の場合は入場を制限する。オンライン配信や後日のアーカイブ配信も予定されている。(守田順一)