僅か6日間だけ見られる逸品も! 1200年以上も継承される「日本文化の象徴」が集う展覧会
【女子的アートナビ】vol. 263
特別展『大蒔絵展―漆と金の千年物語』では、平安時代から現代の人間国宝にいたるまでの蒔絵作品を中心に、物語絵巻や屛風、書跡資料などもあわせて展示。蒔絵が日本文化に広がり、楽しまれてきた時代背景も知ることができます。
本展は、MOA美術館と三井記念美術館、徳川美術館の3館による合同企画。東京会場となっている三井記念美術館では、国宝7件、重要文化財32件を含む計127件が紹介されています。
展示作品を見る前に、蒔絵についておさらいします。そもそも蒔絵とは、漆工芸のなかの技法のひとつ。漆で絵や文様などを描き、それが乾かないうちに金や銀などの金属粉を蒔(ま)きつけて固めていく手法です。
三井記念美術館の学芸員で本展を担当した小林祐子さんは、蒔絵の歴史について、次のように教えてくれました。
小林さん 漆の木からとれる樹液を利用する工芸品は、漆が自生する日本や中国、朝鮮半島、東南アジアなどでつくられていますが、蒔絵は日本だけで発展した技術。日本に現存する最古の蒔絵は、正倉院宝物「金銀鈿荘唐大刀(きんぎんでんかざりのからたち)」の鞘(さや)にある動物の模様です。もともと蒔絵の技術は、奈良時代に中国大陸から伝わったと考えられていますが、中国で蒔絵の伝世品は見つかっていません。中国では失われた技術ですが、日本では発達していきました。少なくとも、日本で1200年以上も受け継がれている技術です。
本展は8章で構成。そのなかから、特に国宝や重要文化財が多く集まる1~3章を中心にピックアップしていきます。
まず注目したいのが、大変美しい書の作品《石山切》(藤原定信筆)。平安時代につくられたものです。
平安時代には宮廷を中心とした貴族文化が発達し、日本ならではの美の規範が生まれました。また、かな文字が生まれたのもこの時代。書をしたためる和紙である「料紙(りょうし)」にも、金銀を用いた華麗な装飾が施されていきます。
でも、巻物や冊子は読むものなのに、なぜこれほど豪華な装飾がつけられたのでしょう。小林さんは次のように解説しています。
小林さん これらの書は「調度手本」と呼ばれています。貴族の邸宅の棚などに飾られるもので、生活を彩るための調度品なのです。《石山切》では、銀泥で松や鳥などの下絵が施されています。このような料紙装飾は、蒔絵の模様にも通じるものです。素材を超えた和様の美をご覧になってみてください。