イサム・ノグチの創作を支えた「道具」に迫る展覧会へ。
日本人の父とアメリカ人の母との間に生まれ、少年期を日本で過ごし、指物の修行をしていたノグチは、日本で手にした道具を持って渡米。渡米後、新たに手にしたものを含め、実際にノグチが愛用していた「道具」を通じて彼の創作の背景に迫るという、これまでにない視点で考察されたのが『イサム・ノグチTools』展だ。
イサム・ノグチはわずか14歳の時、1918年に母方の母国アメリカに単独で渡米。第一次世界大戦が始まり世界情勢が混沌とした時代、アーティストを志した少年はやがて彫刻家を志す。日米両国で育つという当時としてはやや特殊な環境の中、ヨーロッパやアジアを旅しながら見聞を広め、自らのアイデンティティと社会における関係性を模索しながら、その道を切り開いていった。
84年にわたる生涯の中で主に彫刻作品に向き合ったノグチは、あまりにも多くの優れた作品を残した世界的な芸術家として、日本でもその名や作品を知る人は多い。本展では、木、石、金属や粘土、そして和紙など様々な素材と向き合い、現代でも色褪せない造形作品を生み出した、その過程の背景にある「道具」たちを、実際の展示や模型、映像を通して紹介している。
木工、石を中心に彫刻を探求したノグチは、肖像彫刻から舞台美術、そして環境彫刻やランドスケープデザインへとその活動領域を拡げ、1950年以降は主に日本で陶器や和紙を使った照明作品を手がけるなど生涯を通じて様々な素材に向き合った。
主な活動拠点はニューヨークだったが、1956年には庵治石の産地、香川県牟礼町を初めて訪れ、以降、1969年からアトリエと住居を構えて日本での制作活動に没頭していた時期もある。牟礼で出会った石工・和泉正敏の存在により、世界中からあらゆる石材を取り寄せ制作に勤しんだ。ノグチの作風はこの頃大きな進化を遂げたという。展示には、玄武岩、花崗岩、万成石を始めとする、彼が興味を持った多種多様な石材を見ることができる。