『日本で必ず起こる「阿蘇山噴火」…トンガの「100倍越え」の大災害がやってくる』へのユーザーの意見まとめ
【図】トンガ噴火と日本列島のスケールの比較はこちら9万年前の「日本埋没」Photo by gettyimages 日本列島で、もっとも大きな噴火を起こした火山をご存じだろうか。
'91年に「平成大噴火」を起こした雲仙普賢岳でも、1707年に噴火して江戸に壊滅的な被害を与えた富士山でもない。熊本の阿蘇山だ。
「約9万年前に起きた阿蘇山大噴火は、富士山噴火の1000倍以上のエネルギーだったとされています。数百度の火砕流が海を越え、マグマが瀬戸内海を埋め尽くし、大量の火山灰で日本は『埋没』しました」(マグマ学研究者で神戸大学名誉教授の巽好幸氏)
1月15日、南太平洋の島国・トンガ付近の海底火山で発生した噴火は、世界中に火山の恐ろしさを痛感させた。
海底火山の海域には285ha(東京ドーム61個分)の陸地があったが、ほぼ消滅してしまった。首都ヌクアロファは火山灰で覆われたことで水が汚染されてしまい、飲料水の確保が喫緊の課題となっている。
だが、降灰で空港も使えない上、海底ケーブルが損傷して通信が依然途絶えており、国際社会による救援活動は進んでいない(1月20日時点)。
直径約480kmにも広がった噴煙を出した大規模噴火は、世界中に影響を及ぼした。トンガから1万km以上離れた南米ペルーやチリにも津波が襲来して死傷者を出している。日本でも奄美群島で1・2mの津波が観測され、鹿児島では衝撃波で生け簀にいた5万匹ものブリの稚魚が死んだ。
トンガにおける火山噴火の研究を続けてきた、オークランド大学教授のシェーン・クローニン氏はこう解説する。
「現地での調査が難しい状況なので、噴火の詳しいメカニズムはわかっていません。ただ、何千kmも離れた場所にも津波を引き起こしたり、イギリスまで衝撃波が届いたりしたことを踏まえると、火山爆発指数(VEI)は6だと考えられます」
このVEI(VolcanicExplosiVityIndex)とは、噴出物の量で噴火の規模を0~8の段階で示す指標だ。1増えるごとに噴出物の量はおよそ10倍になる。ちなみに1914年に桜島が大隅半島と繋がったときの大正噴火が4、1707年の富士山噴火が5とされている。
日本大学教授で『破局噴火―秒読みに入った人類壊滅の日』著者の高橋正樹氏はこう警告する。
「トンガの噴火の100倍もの大規模噴火が、いつか必ず日本列島を襲います。人類や文明に大きな影響を与えるとされるVEI7~8レベルで、『破局噴火』と名付けられています」
破局噴火とは、私たちが想像する通常の噴火とは、メカニズムも規模もまったく異なる破滅的な噴火形式だ。
火山学者で武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏はこう解説する。
「火山の噴火には2種類あります。地下のマグマだまりに新たなマグマが供給されて、圧力増加や温度上昇による発泡が原因で起きるのが『山体噴火』です。炭酸飲料を想像すればわかりやすい。
『破局噴火』の場合は、まず巨大なマグマだまり内のマグマ自身の浮力で、マグマだまりの上部にある地殻に亀裂が生じます。それからマグマだまりを縁取る円周上に火口が複数できて、大量の噴煙やマグマが噴出します。
最終的に複数の火口が一挙に繋がり、支えを失った岩盤が陥没することで噴火がクライマックスに達します。ここで、さらに大量のマグマや火砕流が全方位的に噴出するのです」
火山を水道に例えてみるとわかりやすい。蛇口(火口)から水(マグマ)が出るのが「山体噴火」、貯水槽(マグマだまり)ごと爆発するのが「破局噴火」だ。
つまり、破局噴火とは大量のマグマが一度に地表にぶちまけられるという想像を絶する現象なのである。この噴火はカルデラを形成するため、「巨大カルデラ噴火」とも呼ばれている。
ここで冒頭の話に戻ろう。日本での最大級の噴火を起こしたのは阿蘇山だと紹介したが、これこそが破局噴火だ。いまや観光地となっている阿蘇カルデラは、この噴火によって誕生した。
「阿蘇山だけではありません。かつて日本では、富士山大噴火の数十~数百倍のマグマを噴き上げるような巨大カルデラ噴火が、過去12万年間だけでも10回起きていました」(巽氏)
最後に国内で破局噴火が起きたと確認されるのは約7300年前の縄文時代だ。九州南端から南に約50km離れた場所に「鬼界カルデラ」がある。これは水深400mの海底にあるが、その縁に竹島と昭和硫黄島、薩摩硫黄島が顔を出している。
鬼界カルデラを形成したのは、この薩摩硫黄島で起きた噴火だ。この災害によって、縄文人は壊滅的な被害を受けたとされている。当時の様子を、京都大学名誉教授で地球科学者の鎌田浩毅氏がこう再現する。
「まず、海中から巨大な噴煙が海面を突き破って2万mの高さに達しました。同時に、大量の灼熱した軽石が九州南部を襲います。これと同時に、火砕流が時速100kmで全方向に向かって広がるのです」
もし、同レベルの破局噴火が日本に起これば、火山灰や軽石、火山ガスなどが一体となった火砕流の温度は700℃に達し。これが、高さ数百mを超える巨大な噴煙の壁となり、特急列車並みの速度で九州に到達するという。
さらに、その大災害は日本全土も覆うという。その詳細を後編の『阿蘇山の「巨大噴火」は必ずやってくる…日本列島をおおう「被災者1億人」の現実味』でお伝えする。
『週刊現代』2022年1月29日・2月5日号より週刊現代(講談社)