「こっくりさん」が大流行…! 少年たちの世界観を変えた『うしろの百太郎』
未来に明るい希望を持てなくなったせいか、日本に空前の「オカルトブーム」が巻き起こった。
主人公の後一太郎(うしろ・いちたろう)は「後心霊科学超能力開発研究所」を主宰する心霊研究家を父に持つ中学生。次々と霊にまつわる事件に出会う中、「主護霊」の百太郎に守られながら心霊世界への理解を深めていく。
これ以前から、少女マンガを中心に幽霊や化け物が登場するホラーマンガはあった。本作が斬新だったのは、「心霊科学」という耳慣れない言葉を持ち出し、科学と相容れないと思われていた心霊現象や超能力を科学的に説明しようとしたことだ。このアプローチが、科学好きな'70年代の少年たちに大受けした。
どんな人にも先祖の「主護霊」がついている。死んだ場所から動けなくなった「地縛霊」。「幽界」に行けずにこの世をさまよう「浮遊霊」。肉体と「幽体」を結ぶ「魂の緒」が切れると死ぬ、などなど――。
素直で頭の悪い小学生だった筆者など、これらの話を丸ごと信じた。肉眼には見えないが、たとえば「太陽系には火星や土星という惑星がある」のと同じように、“科学的な事実”として自分にも主護霊がいるのだと疑わなかった。