世界遺産・石見銀山のまちに新図書館…坑道跡イメージした本棚・佐野史郎さんらの選書200冊
図書館は「石見銀山まちを楽しくするライブラリー」と名付けられ、地元の義肢装具会社「中村ブレイス」が所有。同社と県立大が賃貸契約を結び、学生たちは、教員らでつくる一般社団法人「ヨリシロ」とともに企画や情報発信などに関わる。
飲食店のブランディングなどを手がけてきた県立大の平井俊旭講師のデザインを基に、中村ブレイスが2021年夏から改修を始め、今春までに完成。同社の中村俊郎会長が「学びの拠点となり、国際的な交流が生まれる場所に」と、私財を投じて全面支援した。
本格オープンを前に、3月31日と今月1日には住民らを対象にした見学会が開かれ、浜田キャンパスの学生が施設を案内した。
本館1階の図書スペースは2か所あり、「 行燈(あんどん)の間」には大森町産の竹でつくられた本棚3基を設置。学生の交渉で実現した俳優・佐野史郎さんら著名人の選書による約200冊が並ぶ。薄暗い空間の「えほんのどうくつ」は、来館者が懐中電灯を照らしながらお気に入りの絵本を探す仕掛けが設けられており、学生は「銀山を探検するイメージで楽しんで」などと説明した。
1階にはカフェもあるほか、中庭には足首程度までの浅いプールが設けられ、石州瓦用の土で作られたタイルが敷き詰められている。
地元農家の協力を得て、朝市などを企画する総合政策学部4年の束元裕弥さん(21)は「大森に溶け込む施設なので、銀山を散策する動線になってほしい」と期待。同4年の森岡万依さん(21)も「住民を元気づけ、皆が楽しめる場所にしたい」と意気込んだ。
中村会長は「若い学生の声が大森に響くのは励みになる。出会いや語らいの場として新たな交流につながれば」と期待した。
23日午前11時からは開設式典を開催。29日の本格オープン後は土、日曜を中心に午前10時~午後5時で開館する。大型連休中は木、金、土、日曜に開館予定。問い合わせは県立大企画調整課(0855・24・2201)。
◆ 旧商家「松原家住宅」 =朝鮮銀行総裁で、半島経済を支えた松原純一(1884~1952年)の生家として知られる。木造2階建てで、1800年以降の建築と考えられている。