建築資材を一時利用した“石庭”が、京都・東山〈ロームシアター京都〉の中庭に期間限定で出現。
〈ロームシアター京都〉や〈京都市京セラ美術館〉の再整備を機に、人々が集い、憩う場として屋外空間も充実中の京都・岡崎エリア。そこに2022年秋、石を積み上げた6つの “石組” からなる〈石ころの庭〉が登場した。
場所は〈ロームシアター京都〉の中庭〈ローム・スクエア〉。2019年からつづく野外ステージ企画「OKAZAKI PARK STAGE 2022 + ステージ インキュベーション キョウト」のためにつくられたもので通常時は憩いの場、イベント時にはステージや客席としても使われる。
見どころは “石庭” を思わせるランドスケープ。石組の鋭利な直線が背後の緑を引き立て、東山を借景として浮かび上がらせる。「東山をのぞむ場所のポテンシャルに惹かれ、東山の遠景、岡崎公園の緑という近景、そして石庭が連なる借景庭園に見立てた配置を検討しました」と設計した岩瀬諒子は言う。
主な石組は東山の一角、大文字山に向かう軸線に沿って並ぶ。階段状の石組に腰かけると、自然と東山に意識が向く。石組同士の隙間をすり抜けたり、立ち止まったりすると、奥の緑が見え隠れする。石組の形は積んだときの安定性が高く「自然との対比でいい意味での違和感があり、かつ砕石を日々扱っている職人さんからもきれいだと好評だった(岩瀬)」というピラミッド型やプリン型だ。
〈ロームシアター京都〉といえば元々は、前川國男の設計により〈京都会館〉として1960年に竣工したモダニズムの名建築だ。特徴は東山をのぞむ周辺環境との調和を意図した水平線を強調したデザインで、日本建築学会賞を受賞した際には「禅寺のもつ素朴ではあるが力強い荘厳にも似通うものをいみじくも現出している」と評されたこともある。〈石ころの庭〉の登場によりあらためて、前川が意図した「東山のシルエットとの調和」や建物に備わる「素朴な禅寺の趣」の魅力が伝わってくる。