三重大生が「浮世絵貼交帖」調査 6冊分データ化 石水博物館に協力
浮世絵貼交帖は、江戸時代の津の豪商・川喜田家の14代当主だった川喜田石水(1822~79)が幕末から明治初期にかけ、江戸時代後期の浮世絵を収集したもの。1冊あたり約100枚貼り付けられたB4判大の貼交帖を同館は約40冊を所蔵している。石水と親交が深かった二代歌川国貞、国貞の師匠にあたる三代歌川豊国らの作品が含まれ、さらに芝居絵、歴史物などが系統別に整理されている点などから資料価値は高いとみられていたが、これまで作者や年代、描かれた人物などの調査が進んでいなかったという。
三重大が同館の資料調査を行うのは初めてで、今回は江戸時代の歴史や文化を専攻する学生と共に、吉丸雄哉教授(近世文学)、塚本明教授(日本近世史)も調査に加わった。学生は両教授と同館の桐田貴史学芸員から調査手順の説明を受けた後、2人ずつ3班に分かれ、専門書などで落款を確認して年代を判断し、くずし字を読み解いて作品名や役者名などをデータにまとめた。今回、3日間かけて学生が行った調査により、計6冊分がデータ化されたという。
浮世絵を見るのは初めてという3年生の片倉有里さん(21)は「情報を取りこぼさないよう気を付けた。役者名を読み解くのは、歌舞伎の知識がなくて難しかった」と話していた。塚本教授は「学生にとっても有益で貴重な機会」と初めての試みに手応えを感じていた。企画展では、学生が展示の解説文を書くことも決まった。
三重大は2009年に県内の博物館と連携協力を目的とした「博学連携推進室」を設立。すでに鳥羽市立海の博物館と県立博物館と連携している。この取り組みを石水博物館が知り、学生が未整理の資料に触れることで、地域の歴史や文化財への関心を高めてほしいと大学に協力を求めた。今回の試みを機に両者は、学術的な連携協力を目指す予定だという。