奈良の自然をトレッキングしてアートを体感する芸術祭。「MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館」が開催
心のなかの美術館」が開催される。会期は9月16日~11月12日。
本芸術祭は新型コロナウイルスによる観光客が激減していた2020年に、観光復興の試みとしてスタート。人と人が過度に接触する状況を避けたうえで、トレッキングをしながら芸術や自然に触れることができる「歩く芸術祭」として始まった。
行動制限が解除された今年の芸術祭の舞台となるのは「吉野町」「下市町」「下北山村」の3エリア。これらの土地を歩き、その土地の人々と対峙しながら「自分の心のなかにある美術館」の展示をつくりあげていく芸術祭だ。
プロデューサーを務めるのは、ライゾマティクスの設立メンバーであり、社内のアーキテクチャー部門「パノラマティクス」を率いる齋藤精一。齋藤は本展の開催に際して次のように語った。
「4年目の開催となり、持続可能な芸術祭として今後も続けていく体制が整ってきた。今年のテーマは『Competency』とした。ただ訪れた人が見て帰るのではなく、地域の人々とともにつくることに参加してもらえる、芸術祭以上のことができればと考えている」。
各エリアの特徴を紹介したい。「吉野町」エリアは、テーマを「逢(あう)」とした。世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の起点となり、町域の一部は吉野熊野国立公園、吉野川・津風呂県立自然公園に指定されている吉野町は、春にはシロヤマザクラが咲き乱れる佐倉の名所としても知られ、古くは日本書紀や古事記にも記述がある歴史ある土地だ。吉野町のコースは吉野山を目指す約10キロメートル、所要時間は約5時間30分ほどとなる。
このエリアのディレクターは、京都を拠点とする美術家であり、宿泊型アートスペース「kumagusuku」代表の矢津吉隆が務める。矢津はこのエリアの参加アーティストとして、異なる分野のアーティストが複数人で活動をともにするコレクティヴやアートユニットなどを選んだ。コロナ禍を経て、人とものをつくりあげることの重要性を意識し、こうした人選になったという。
「吉野町」エリアの参加アーティストは、北山ホールセンター、kumagusuku/宇野湧+武内もも、齋藤精一、sign
play、副産物楽団ゾンビーズ、副産物産店(山田毅+矢津吉隆)、MAGASINN(CORNER MIX、
井上みなみ、武田真彦+糸魚健一)。また、ライゾマティクスによるスペシャル・コンテンツも予定されている。
「下市町」エリアのテーマは「結(むすぶ)」だ。奈良県の中心に位置し、吉野山地と大和平野を結ぶ交通の要衝として栄えてきた下市街は、柿や梅などの農業、吉野杉や桧などの林業、市場町や割箸などの木工業などがさかんな地域だ。このエリアのコースは梅林のなかを通る約7.5キロメートル、所要時間は約3時間ほどだ。
このエリアのディレクターを務めるのは、都市の遊休施設を一時的に占有して一般へと解放する運動を行ってきたSKWATだ。自分との対話、自然との対話のみならず、コロナ禍を経たいまだからできる、現地の人々との深い協業を志向するという。エリアの参加アーティストはSKWAT、齋藤精一。
「下北山村」エリアのテーマは「集(つどう)」。奈良県の南東部に位置し、西に釈迦岳をはじめとする大峯山系が連なり、村内の大部分が吉野熊野国立公園に指定されている。江戸時代に大峯修験の一大拠点であった集落「前鬼」など、多くの自然があふれる緑豊かな村だ。このエリアのコースは明神池を目指す全長約9キロメートル、所要時間は約3.5時間となる。
このエリアのディレクターは、プロジェクト・ディレクターの浅見和彦、メディア・アーティストのゴッドスコーピオン、アート・アンプリファイアの吉田山の3人が務める。
浅見は土地に残る伝説や民俗史に着目したうえで、アーティストとともに現地ならではの経験を提供していくという。ゴッドスコーピオンは修行の道としての山々のスペクタクルな地形や景色を訪れる人々と望む。また、吉田山は幼い日々に体験した山遊びの身体感覚や空間認識を再度呼び起こすことを志向するという。
参加アーティストは大小島真木、コットスコーピオン、contact Gonzo、齋藤一、SandS、花形模、Hertz (Discont + Riki
Osawa) 、松岡湯紀、やんツー+齋藤 帆系+吉田山、yuge (noge)。