全国で70万人動員、ソビエト映画の傑作「戦艦ポチョムキン」 高揚と衰退、上映運動の実態を一冊に
「戦艦-」(1925年)は、水兵の革命的反乱を斬新な表現で描いたソビエト映画の傑作。戦前の日本では検閲により公開されず、59年2月に横浜から自主上映が始まると、全国で70万人を動員したとされる。
神戸映サも関わり、神戸では同年5月に上映。塩見さんが、当時の会員が残した機関紙や手紙などを見つけて読み込むと、「伝説化された運動の実態が見えてきた」という。
そもそも初上映は、横浜映サの年間ベスト発表会の関連イベント。前年に発足した「上映促進の会」の主導ではなかった。この会自体、配給側が始めたもの。会費を集めて映画館を借りた自主上映でも、実際は映画館がお膳立てをしている「興行」に等しいケースがあったと指摘する。
「各地で上映の形は異なり、自主上映といえるのは関西くらい」と塩見さん。だが、京阪神でも映サと労働組合系団体(労映)、別の鑑賞団体の間には「温度差があった」。組織の理念や性格の違いによる対立や主導権争いを、議事録や連絡文書から明らかにした。
「戦艦-」は多数の観客を動員したが、高揚が続かなかったのは「『この映画を見たい』という要求が後回しにされていた」からだと分析。「鑑賞団体に携わる一員として、今でもそこが一番大事にすべき点だと伝えたい」と話す。
風来舎刊。1430円。出版記念の上映会を来年1月28日、神戸映画資料館(神戸市長田区)で予定。神戸映サTEL078・371・8550
(田中真治)