新たな表現に挑む長場雄の第2章が詰まった作品集。
無駄のない線で描かれるドローイングは、ポップでチャーミング。シンプルだけど豊かさにあふれている。その作風で揺るがぬ知名度を手にした長場雄だが、この3年余りに開催した個展でも、積極的に新たな技法や表現を取り入れてきた。新作の作品集には、その進化と軌跡が濃縮されている。
Q 『Express More with Less』は、近年の長場さんの変遷を、ひとつの章として総括した作品集に感じました。
エースホテルのメモ帳にペンで画を描き、小さなサイズで展示をしたり、作品集制作をしたのが第1章とすると、アクリル絵具を使い、メモ帳のドローイングをキャンバスへと拡大した個展『Express More with Less』、その続編として大型のキャンバスワークや鏡面を使った立体作品などを展示した『The Last Supper』は第2章という感覚なんです。今回は、その第2章を形にした作品集と言えるのかな、と。
Q 表紙回りの色も新鮮ですね。
デザイナーさんが緑を入れた表紙を提案してくれたとき、すごくいいなと感じてこの色に決めました。今回は中を見てもらうことを大切に、装丁はあえてシンプルにしています。また、このタイトルは以前、人から教わった言葉。“少ない情報で豊かな表現をする”
という意味が、僕の作風を言い当てていて、気に入っています。
Q 今回、改めて作品を見返してみて、感じたことはありますか?
線の入れ方に、そのときどきの試行錯誤が見えておもしろいなって。また、こなれすぎないいいあんばいを探りながら描いてきたんだなというのは、すごく感じます。
Q 描く人物の変化にも、作品の軌跡が見えるように思います。
最初は誰もが知るスーパースターを描いていましたが、そういった人って徐々に減っているんですよね。加えて、僕が描く人物自体を知らない世代も増えてきた。今後は普遍性のあるテーマ選びをしないとな、と描き始めたのが街中の人々でした。さらに今は心情が伝わるポージング、造形を考えて描くようになっています。その代表が、《Pink Nude》という作品。過去作を見返したとき、こういった表現を育てていきたいという思いが浮かび、作品集の表紙や今回の個展のタイトルにも使用しました。この表現の先に、新たな道がある気がするんです。
限定1,000部、6,600円。特装版は、限定50部165,000円(Edition KAERUSENSEI)。個展『Pink Nude』が〈Lurf MUSEUM〉で7月24日まで開催。●東京都渋谷区猿楽町28-13 Roob1 1F・2F。11時~19時。