和歌山・新宮の遺跡、国史跡へ 「中世の港湾都市」示す
平成27年の試掘調査以降、12世紀後半~16世紀中頃とみられる地下式倉庫群や鍛冶遺構が見つかった。約30ある倉庫群は地面に深さ80センチ~1メートルほどの穴を掘ってつくられており、地上に比べて温度や湿度の変化が少ないために蔵として使ったと推定される。
遺跡からは大量の土器片や陶器片も出土。愛知県や岡山県から来たとみられるものもあった。
現地は熊野川の河口から約2キロの距離で、中世に、この一帯に海上交易を行う港湾都市が存在したことが明らかになった。14世紀末~15世紀に最盛期を迎えたとみられるという。
新宮は近世には海上交通の重要な寄港地だったことが分かっていたが、中世の港湾都市については文献が極めて少なかった。市教委は「海を介した交流の実態を知るうえで貴重」としている。
遺跡は新宮城跡に隣接。当初、新宮城下町遺跡としていたが、昨年12月に名称を変更した。
指定予定面積は約5800平方メートル。遺跡は昨年開館した丹鶴ホールの建設予定地だったが、設計を変更して埋め戻し、地下に現地保存された。現在、地上がホールの駐車場と広場になっている。答申を受けて、市教委は「市民が見られる整備を考えたい」としている。