プロテストするレズビアンの美術【後編】1960年代以降の現代アートにおける女性同性愛表象から“プライド”を考える
ミカリーン・トーマス(1971~)によるコラージュ作品《Sleep: Deux Femmes Noires》(2012)はギュスターヴ・クールベによる《眠り(Le Sommeil)》(1866)を引用し、それを黒人によって描きなおすことで美術史のなかで不在とされてきたものを表しつつ、不在としてきたことを指摘するような作品だ。
いくつかエディションがあるものの、どの作品も中央にクールベの作品の構図そのままにふたりの黒人女性が眠り、背景には鮮烈な色の地塗りの上に風景写真がコラージュされている。元の絵では室内だった背景が屋外となることで、ふたりの女性の生き生きとした強さがここでは示される。
この作品が初展示された個展「Origin of the Universe」ではクールべの作品のほかにもモネをはじめとする古典作家のパロディが多数、展示されていた。美術史の文脈は、現代において作品を制作する作家にとって決して無縁なものではないのだ。