阿川佐和子が語る「境遇が変わったとき、『女ともだち』の関係はどこまで続くか」
阿川佐和子氏の最新小説『ブータン、世界でいちばん幸せな女の子』(文藝春秋)は、「女ともだち」の物語である。中学時代からの仲良し6人と、忘れられていた同級生「ブータン」をめぐって、女性たちの人生が交錯する。既婚・未婚、子持ち・子なし、働いている・働いていない──境遇の違いによって、時に離れ、くっつき、距離が変わってゆく「女ともだち」。しかし、だからこそ面白いと阿川氏は語る。
----------
──「ブータン」こと丹野朋子は、中学時代、ブタみたいに太っている丹野(タンノ)から「ブータン」と呼ばれていました。クラスでは存在感が薄く、アラフォーになって再会した同級生たちも、最初は思い出せないくらい。なぜ、そういう人物を、物語の軸にしたのでしょうか?
学生時代、いろいろなクラスメイトに出会ってきたわけですが、そのなかには、自分がほとんど関心を払わず、話したこともないような人もずいぶんいたわけです。そういう人と、大人になって何かの機会に再会したら、なんて魅力的な人だろうと思ったことが何度かありました。自分自身も子どものころとは見方が変わっているし、相手も、その後、どういう人生を歩んだかで、印象が大きく変わっていますよね。そういう再会って面白いなと思ったんです。
──この小説は6編からなる連作短編集で、同級生らを語り手として、「ブータン」の物語が紡がれていきます。世界一幸せ度の高い国のあだ名にちなんで、自分も世界一幸せ度の高い人間になろうと決めたブータンの人生が、少しずつ、明かされていきますね。
登場したときは、ちょっと煩わしいぞ、こういう女とかかわると面倒だぞ、と思われるかもしれません。でも、最後には、魅力的だなと思ってもらえるような人物にできたらいいなと。というのは私は、最初は、たいしてカッコいいとも素敵だとも思わない主人公が、だんだん愛おしくなっていって、ラストで、ものすごく魅力的になる映画が好きなんです。そういう感動の仕方が好きなので、小説でやってみたいなと思いました。