フィリップス アジア新本社で初のセールが実施。奈良美智の作品が14億2500万円で落札
「20世紀・現代美術」がメインである今回のセールにおいて最大の目玉となったのは奈良美智による代表作《Lookin' for a
Treasure》(1995)だ。本作は30日のイブニングセールにおいて、事前エスティメート7000万香港ドル(約11億8400万円)のところ、8385万香港ドル(約14億2500万円)で落札。日本を代表する現代アーティストとして堅調なマーケットであることを示した。
今回のハイライト作品のひとつである草間彌生の《Pumpkin》(1995)は、エスティメート4000万~5000万香港ドル(約6億6700万~8億3400万円)を上回る5600万香港ドル(約9億5200万円)を達成。本作の収益はアメリカ・アイオワ州にあるカーネギー美術館へと寄付され、ローカルアートや若手作家の支援に活用される予定だ。
ほかにもマシューウォンの《The
Road》(2018)は予想落札価格2400万~3500万香港ドル(約4億~5億8380万円)のところ、5611万香港ドル(約6億1500万円)で落札。2500万~3000万香港ドル(約4億1700万~5億円)と落札予想された草間彌生の《Infinity
Dots (HTI)》(2001)は2768万香港ドル(約4億7100万円)。ロイ・ホロウェル《A Gentle Meeting of
Tips》(2018)は500万~700万香港ドル(約8340万~1億1680万円)の予想に対し、660万香港ドル(約1億1200万円)での落札となった。
また、今回のセールでオークション新記録を樹立したのは、中国出身のアーティスト・陳可とアメリカ出身のアーティストであるブレット・クロフォードによる作品だ。200万~400万香港ドルと(約3400万~6800万円)予想された陳可の《Outside
the Window》(2020)は508万香港ドル(約8600万円)での落札となった。
いっぽう、クロフォードによる《H3re He
Comes》(2023)は予想落札価格が60万~80万香港ドル(約1014万~1350万円)のところ、216万香港ドル(約3700万円)で落札され、予想を大きく裏切る異例の高値となった。
フィリップス
アジア代表のジョナサン・クロケットは、今回の落札結果について次のようにコメントしている。「(今回のセールの売上が)昨年のイブニングセール総額を65パーセントも上回る結果となり、感激している。また、アートウィーク期間中の香港で得たエネルギーと熱意は、香港のアートマーケットの強さを証明するものだ。この2週間で8000人近くの国内外のお客様を新しいスペースに招待できたこと、そして34ヶ国のお客様から積極的に入札をしていただけたのは本当に嬉しいことである。2023年、この最新鋭のアジア本社で開催される数々のオークションや展示会を楽しみにしている(リリースより一部抜粋)」。
なお同社は続く31日にデイセールを実施。売上は1億2200万香港ドル(約20億7400万円)におよび、30日のセールとあわせて総額4億7300万香港ドル(約80億4200万円)を達成した。
今回のデイセールのポイントは、草間彌生やゲルハルト・リヒター、パク・ソボといったアジアから西洋まで幅広い人気のアーティストによる作品に加え、ロッカクアヤコ、ジア・アイリ、ミカエラ・イヤーウッド・ダンなどの新進気鋭のアーティストも売上トップ10にランクインした点にあるだろう。
同社では今後も草間彌生や塩田千春に焦点を当てた展示会を実施するほか、5月には時計やジュエリーなどのセールも複数予定されている。新本社における初のセールで勢いを見せつけたフィリップス香港。今後の動向にも要注目だ。