抑圧された声聞いて 従軍慰安婦の生涯と向き合う一人芝居 大阪
城田は東京の下町に生まれ、家庭の事情で10代で芸者屋に奉公に出た。戦中は台湾や南洋諸島で慰安婦を経験し、戦後は米兵相手に体を売った。その後、婦人保護施設「かにた婦人の村」(千葉県館山市)で暮らすようになり、戦地での体験を語り始めた。
金子さんは52年生まれで、劇団「コズミックシアター」を率いて演劇活動を続けている。本作では、金子さん演じる「私」が、城田の自伝を繰り返し読み、自身の内にある偏見に向き合う。城田の生涯と「私」の葛藤を通じて、女性を「純真な女」と「汚れた売春婦」に分断し、被害者の声を抑圧する社会構造が浮かび上がる。
脚本を手掛けた劇作家のくるみざわしんさんは、従軍慰安婦の問題について「関心はあったが、簡単に書けるものではないと遠慮していた」と吐露する。その上で「その態度が間違っていた。日本人の慰安婦は戦後、最も声を上げられなかった存在だが、それは私たちの側に聞く姿勢が乏しかったからではないか」と話す。
約3年前に初稿を書き上げた後、出演者のめどが立たずにいたが、脚本を読んだ金子さんが切望。劇団太陽族代表の岩崎正裕さんが演出を手掛け、2022年12月に大阪市内で上演が実現した。「従軍慰安婦の存在は知っていたが、日本人の言葉に触れたのは初めてで、衝撃を受けた」と金子さんは振り返る。
上演にあたり、金子さんはくるみざわさんと話し合い、「私」の苦悩をより強く表現することを望んだ。「目を背けてきた自分自身の偏見に向き合う必要を感じた」という。
本作の冒頭に「従軍慰安婦って売春婦でしょ」という言葉がある。女性の間に線を引き、加害者の姿を隠す。そんな社会の罪を「私」と城田の言葉が告発する。金子さんは「まずは城田さんの声を少しでも多くの人に聞いてほしい。そのためにも、長く上演を続けていきたい」と語る。
上演の日程は、7月10日▽8月21日▽9月11日▽10月16日▽11月13日▽12月4日。午後7時開演。要予約。2500円。問い合わせは080・7276・4756。