『「薄利多売にも限界」 物価上昇、身近な商品への影響大きく』へのユーザーの意見まとめ
【表でみる】幅広い商品の値上げが進む見通し
「価格の安さを売りにしているスーパーなので、何とか頑張って売価を抑えている状況です」
大阪市城東区の住宅街で食品や日用品を扱う「スーパー玉出京橋店」の石原陽子店長はこう明かす。この数カ月、仕入れ値の上昇が続いているといい、種類も野菜や牛肉、鮮魚、加工食品、小麦が原料のパンや麺類など多岐にわたる。石原さんは「なるべく売価を上げずに薄利多売でしのいでいるが、限界がある」と厳しい表情で語る。
物価上昇は家計負担に直結する。この半年ほど食品の値上がりを感じているという買い物客の主婦(35)も「コロナで家で食事する分、食費がかさむ。少しでも安いスーパーを探したり、安いときにまとめ買いした野菜を冷凍したりして節約している」と話した。
■資源価格の高騰響く
背景にあるのは、原油や液化天然ガス(LNG)などの資源価格の高騰だ。世界的な景気回復で需要が急増したため、食品や日用品の生産コストが増大する。輪をかけたのが円安で、輸入に頼る原材料の仕入れ値上昇につながっている。
企業側からすれば、増えたコストの分を価格転嫁しなければ、収益が悪化する。このため、牛丼やポテトチップス、ティッシュペーパーなど消費者に身近な商品の値上げに踏み切る企業が相次いでいる。
日本総合研究所の若林厚仁主任研究員は「資源高、円安がさらに進んで物価が上がり続けるということはなくても、高い水準で横ばいになる」とみる。
物価が高止まりする一方、賃金上昇の動きは鈍い。コロナ禍で今後の景気が見通しにくく、経営体力の乏しい中小企業は基本給の引き上げに慎重姿勢だ。中小を顧客とする地方銀行の幹部は「給料を底上げするという話はまるで聞かない」といい、物価上昇を上回る賃上げの実現は遠い。
岸田文雄政権が賃上げ税制の拡充を掲げるなどの機運醸成もあって、大企業での賃上げは進むとする若林氏も「中小の場合、業績堅調でも基本給ではなく、ボーナス増で対応するだろう。コロナが直撃した飲食や宿泊などサービス業は余裕がない」と指摘。ベースとなる給料が上がらなければ、消費に回る分も少ないという。足元の物価上昇は、企業収益の増加でさらに賃金アップにつながる好循環ではなく、家計への圧迫は避けられそうにない。(岡本祐大、井上浩平)