中高生らがクジラの骨〝発掘〟 3Dデータ化も 千葉・南房総
漂着したコククジラは体長8・9メートルのメス。コククジラはアジア系とカリフォルニア系に分かれ、日本周辺に生息するアジア系の個体数は推定120頭程度にすぎない。国内で展示されているアジア系の骨格標本も10体に満たず、研究の妨げとなっている。
当時、コククジラはすぐに解体され、残った肉を腐敗させて除去するために砂浜に埋められた。通常は3年程度で掘り起こすが、資金不足で見込みが立たず、日本財団の協力やクラウドファンディングでの資金集めにより、何とか実現にこぎつけた。
中高生らは主催した「日本3D教育協会」(兵庫県、吉本大輝代表)を通じ、県内や関東近県から集まった。複数のグループに分かれて骨が埋まった場所に向かうと、骨を傷つけないように手袋をはめた手で慎重に掘り起こし、1個ずつ運んでブルーシートの上に並べていった。28日の作業では保護者や鴨川シーワールドの勝俣浩館長らも見守るなか、3時間ほどで大半の骨を掘り出した。
神奈川県逗子市から参加した高校1年の栗山奈月さん(16)は「骨は結構重く、力を入れすぎて折らないように気を付けた。宝探しみたいで楽しかった」と笑顔を見せた。
ブルーシートに並べられた骨は近くのテントに運ばれ、3Dスキャナーで丁寧に形状を読み取ってデータ化。埼玉県松伏町の中学3年、関根秀真君(14)は、学校で生物の教師に紹介されて参加したといい、「スキャナーで読み取りやすい骨との距離が難しかったけど、うまくできたと思う」と話した。
骨は今後、東京海洋大で研究用標本として保管される。同大の中村玄助教(39)=鯨類学=は「骨格標本はアジア系とカリフォルニア系の比較に役立つ。3Dデータがあれば研究の幅が広がり、海外の研究者とも手軽にやり取りできる」と指摘。「生徒たちからは熱意と知識を感じた。今回のような専門的な現場で研究者や大学院生の姿を見て、将来の選択肢の一つとして考えてほしい」と話した。(小野晋史)