チャーリー・エングマン インタヴュー、パルコ2022年春夏のキャンペーンスローガン「TEAM HARMONY」に込めた想いとは?
―2022年春夏キャンペーンは、どこか60年代のヒッピームーブメントも彷彿させるような、サイケデリックでダイナミック、享楽的なイメージです。そこにはどんなメッセージが込められているのでしょうか?
世界がコロナに見舞われて2年以上が経ちます。そんな中、人々が本当の意味で連帯し、楽しく調和するーーコミュニティとハーモニーの精神を表現したいと考えました。仲間たちが引っ張りあう大きなブランケットの上に乗って高く飛び上がったり、ファウンドオブジェクトを用いて作った船に乗って新しい場所を目指したり。僕たちなりのユートピアの解釈です。次の秋冬キャンペーンでは、仲間たちが一緒に家のような建物を作ったり、バンドで演奏したりする姿をとらえています。ひとりではできないけれど、みんなと一緒ならできる。このキャンペーンでは、そういうシーンを創り上げたいと考えました。
―いわゆるプロのモデルではない、実に多様な人々をキャスティングしていますね。多様性の表現は、あなたにとってどんな意味を持ちますか?
多様性を表現するために、いつも多数のモデルをキャスティングする必要はないかもしれないけど、僕たちが生きている社会がまさにそうであるように、肌の色からボディタイプまでさまざまな人たちに登場してもらうことは、今回のキャンペーンにおいて非常に重要な要素でした。加えて、連帯し、互いに高め合うことをビジュアルで伝えるために、サーカス団員やアクロバット、ダンサーなどを起用して身体性の表現にこだわりました。
―とてもポジティブでインクルーシブなムードです。一方、ファッションはこれまで長いあいだ、必ずしもインクルーシブな場所とは言えませんでした。そこにも変化は生まれつつあると感じますか?
従来の画一的な「ファッションらしさ」は、そろそろ打破されるべきだと思います。ファッションはこれまで、エクスクルーシブで特別あることを最大の強みにしてきましたし、その結果、多くの人、コミュニティを排除してきました。誰かを拒絶したり優位性を煽るようなイメージ以外にも、人々をファンタジーと結びつける方法はたくさんあります。
―もし、ファッションに特別な力があるとしたら、それは何でしょう?
僕はすごく単純なので繰り返しになりますが、遊び心とファンタジーがファッションの最大の魅力だと思います。ファッションは人を夢見心地にさせてくれるものであり、ファッションを通じて、僕たちはキャラクターを作りだし、演じることができます。ファッションは表層的なものであり、ゆえに軽薄と見る人も多いですが、ファッションが表層的であるからこそ、さまざまな表現やファンタジーの解釈が可能で、それこそが僕がファッションに惹きつけられる理由なんだと思います。