西洋人が驚いた! 虫聴、蛍狩…虫をこよなく愛する日本の文化を味わう展覧会
【女子的アートナビ】vol. 308
「虫めづる日本の人々」では、古くから物語や和歌、美術作品のなかで季節感や人の心を表すものとして描かれてきた虫に焦点をあて、中世から近現代までの絵画や工芸、着物などさまざまな作品が紹介されています。
サントリー美術館学芸員の宮田悠衣さんは、本展について次のように教えてくれました。
宮田さん 近年、雑誌『ブルータス』で昆虫の特集があったり、虫の展覧会が開かれたりと虫に注目が集まっています。とはいえ、展覧会は花鳥画に比べると少なく、当館でもはじめての取り組みとなります。虫は古来の日本美術において重要なモチーフであり、例えば『源氏物語』や『伊勢物語』など古典文学のなかでは鈴虫や松虫などの鳴く虫や蛍が登場人物の心情を表す重要な役割を果たしています。絵のなかで、いろいろな虫を探してみてください。
では、いくつか見どころをピックアップしてご紹介。
まず第一章「虫めづる国にようこそ」では、江戸時代の絵巻や硯箱などを展示。虫をめでる文化は宮廷を中心に発展し、鳴く虫を捕まえて宮中に献上する虫撰(むしえらみ)も行われていました。また、虫の音を楽しむ虫聴(むしきき)や蛍狩(ほたるがり)などの娯楽も宮廷を中心に育まれたそうです。
この章での見どころは、美しい玉虫姫をめぐる虫たちの恋物語を描いた《きりぎりす絵巻》。
宮田さん 場面の展示替えがありますが、前期では上巻のクライマックス場面が展示されています。セミの右衛門督(うえもんのかみ)が恋の争いに勝ち、玉虫姫と一夜の逢瀬をしたあと、玉虫姫に後朝(きぬぎぬ)の文を届け、その返歌を玉虫姫がしたためている場面です。擬人化した虫たちが、さまざまに活躍する様子を楽しめます。