「使える英語」に記述充実 教科書検定
小学校で英語が必修化されたのは令和2年度。5、6年生で、国語や算数と同じように英語の授業が行われている。今回の改訂で目立ったのが、単語数の増加だ。平成30年度の前回検定の申請本(現行本)と比べて増えたのは、東京書籍825語(128語増)▽開隆堂757語(106語増)▽三省堂668語(45語増)▽啓林館784語(43語増)-の4冊。
単語数は600~700語程度が目安となる。三省堂は前回検定の申請本(現行本)の単語数が623語と各社のうちで最も少なかった。「学校現場から単語を授業で紹介したいという声があった」(編集担当者)ことから、6年生用に中学校の部活動に関する単語などを追加。理解を促すために見開きのイラストと合わせて掲載し、単語を使った会話を呼びかけるトピックなど工夫も凝らした。
検定意見からは、学習指導要領の意図を踏まえた表現の難しさも浮かぶ。三省堂版で意見が付いたのは「山の名前を言うときは、名前の前にMt.をつけます。富士山はMt.Fuji、六甲山はMt.Rokkoのように表します」との記述だ。
問題のないようにも思えるが、ここで求められるのは、文法や規則を教えることではなく、子供たちが英語を実際に使ってみることで、文法や発音を体感的に身につけていく学習だ。知識として文法を教えるのは中学生向けの課題となる。
そのため、文部科学省教科書課は「『Mt.』の後ろに山の名前を当てはめればいいと教えるパターン・プラクティス(文型練習)となる恐れがある」と判断。「山の名前は、Mt.Fuji(富士山)、六甲山はMt.Asama(浅間山)などのように表します」と記述が改められた。
「小学校の英語は教科として歴史も浅く、編集の難しさがある」。三省堂の担当者がこう語るように、教科書づくりは試行錯誤を重ねながらベストな形を模索しているのが現状のようだ。
東洋学園大の津村敏雄教授(英語教育学)によると、原則的に学級担任が授業を行う小学校では、中高と異なり専門的な指導法を習得している教員は一部にとどまる。独自に補助教材を開発したり、低学年から英語学習を取り入れたりしている自治体もあるため、地域間の格差が顕在化しているという。
津村教授は「教職課程で小学校英語の指導法を習得した大学生たちがこの春に卒業し、初めて学校現場に配置される。その新任教員らが経験を積み、リーダーシップを発揮できるようになるに従って英語の授業は改善されていく。小学校での英語教育を安定した軌道に乗せるには、少なくともあと10年程度はかかるのではないか」と指摘した。