“日本で最も有名な女性政治家” 北条政子の新たな顔が…最先端技術で復元に成功【鎌倉安養院所蔵・北条政子座像】
政⼦没後、北条義時の息子・泰時が祖母・政⼦を弔うために諸堂を造⽴して安養院となったが、元弘三年(1333年)に焼失。
鎌倉名越で善導寺と併せて再興されるも、延宝8 年(1680 年)に再び焼失。鎌倉⽐企ヶ⾕にあった⽥代寺の諸堂を移築して再建され、現在に⾄る。
このお寺にはネットやテレビなどでよく見る北条政子の座像(大正末期の製作)が安置されており、「北条政子」と検索すれば、このビジュアルが表示される。
更にもう一体、今まで非公開であったが、かなり古い北条政子の木座像が伝えられており、今回この像の復元の様子を取材した。
この政子座像はかなり古く傷んでおり、厨子の中に保管されてきたが、安養院の鳥居淳生御住職の依頼により、仏像修復家・牧野隆夫氏(吉備文化財修復所)が復元を行った。
座像の木片の一部を検査した結果(⼭形⼤学⾼感度加速器質量分析センター)、1470年~1600年代の値が得られた。少なくとも室町時代後期から江戸時代初期に伐採された材を使った像であることは想定される。
現在伝わっている北条政子座像としては伊豆の国市願成就院所蔵の政子地蔵菩薩に次ぎ古い像となる。
牧野先生は、2021年フジテレビ制作の番組「TimeTrip鎌倉幕府」-悲劇の将軍・夜叉王の面-において、源氏2代将軍・源頼家の呪いの面の復元に成功。その面は、平安時代後期、九州地方に伝わる“鬼の面”の部類に入れるのが妥当と判断された。
この仮面は、源頼家が北条家に暗殺される前、漆を入れられた風呂に入れられ、かぶれた自分の顔を彫らせ、母親の政子に送ったと伝わる呪いの面である。
後に「修禅寺物語」として岡本綺堂が歌舞伎演目として創作し、今でも人気演目の一つだ。
復元する手順としてはまず3Dプリンターを使用するところから始まる。
政子座像を3Dプリンターでスキャンすることで3Dデータに変換。
その3Dデータを元に合成樹脂でできたレプリカをプリントして、元の像と同じ大きさの複製を造る。
3Dプリントされた政子座像には、オリジナルでは判別できなかった顔のしわや目の下のたるみなど微妙な表情が現れていた。
このレプリカを着色・修理し、およそ500年前の状態へと復元していく。
この座像は劣化が激しく、顔の一部、塗料、両手の欠損など復元の際には室町時代などの女性の座像や絵を参考にして、製作された。
復元された政子座像は、晩年の様子を想定されて造られたと思われる。
仏像修復家・牧野隆夫氏は「波乱万丈の生涯を終えようとしている、まさにその頃の様子を再現した座像であり、大変珍しい貴重なもの」と話す。
この座像は何度も火事にあいながらも代々の住職によって大切に受け継がれてきたが、今回の調査で初めてその製作年代や容姿が明らかとなった。
貴重な文化財を修復することはオリジナルを損なう可能性もありリスクを伴う。しかし3Dプリンターを使ったレプリカの復元であれば、様々な試みが可能であり、調査の進展によっては何度でもトライできる。
最先端技術を文化財保護に活用することは伝統的な修復技術を伝承する上でも重要な手段となるだろう。