「捕鯨文化」を守り続けたい、自販機で販売・ふるさと納税返礼品にも…商業捕鯨再開4年
大阪市の中央卸売市場では6月30日、ニタリクジラの取引があった。三陸沖で捕獲され、2日前に大阪港で今季、全国で初めて水揚げされたものだ。最も高価な尾の身(尾びれの付け根)に1キロ30万円の値が付き、昨年を5万円上回った。ニタリクジラとしては商業捕鯨の再開後、最高だった。
水揚げした捕鯨大手の「共同船舶」(東京)の所英樹社長(68)は「大阪には楽しみにしてくれている業者が多い。軟らかい生肉を味わってほしい」と顔をほころばせた。大阪は古式捕鯨発祥地の和歌山県太地町と近く、古くから鯨肉の流通が盛んで鯨料理店も多い。
鯨肉の一部は、その日のうちに阪神百貨店梅田本店(大阪市)に並んだ。赤身は100グラムあたり税込み756円、尾の身は同2700円。試食後、購入した大阪市の会社員(36)は「ほとんど食べたことはなかったが、あっさりしていて馬肉に似ている。今晩のお酒のあてにしたい」と話した。
鯨肉はたんぱく質や鉄分など栄養価が高く、戦後の食卓を支えた。
しかし、乱獲で資源量が減ったためIWCが1982年に商業捕鯨の中断を決め、日本も88年にいったん取りやめた。一方、日本は南極海などで鯨を捕獲して研究する調査捕鯨を始めた。
その後、捕鯨の全面禁止を求める反捕鯨国との対立が続き、日本は2019年6月IWCを脱退、7月1日に商業捕鯨を再開した。
日本には縄文時代から鯨の肉や脂を利用してきた歴史があり、国際批判を振り切ってまで再開したのは鯨文化を維持し、継承する目的があった。一方で再開後も、水産庁が漁獲可能枠を定めていることもあり、21年度の鯨肉消費量は1000トンとIWC脱退前の18年度の4000トンよりも少ない。国内では鶏肉や牛肉、豚肉の消費が中心となる中、鯨肉は需要と供給の両方が縮小し、捕鯨産業の基盤も揺らいでいる。