瑞宝単光章、元静岡市消防団分団長、小林康昰さん(79) 激務こなして45年
「受章を聞いてびっくりしているんですよ。私なんかより、他にもらえる人がいるんじゃないかと思いましてね」と驚きを隠し切れなかった。それでも長年の労苦が報われる形での受章に「ただただ恐縮しています」と笑みを浮かべた。
昭和41年に静岡市消防団・静岡第10分団に入団した。ただ、入団を本人が全く知らなかったという。父親が入団の準備を勝手に進めていたのだ。ある朝、目覚めると枕元に消防団の制服とヘルメットなどが置かれていた。父親に尋ねると「お前が入団するんだ」と思いもよらぬ答えが返ってきた。結局、「若いころにやんちゃをしていて父親に世話をかけていたこともあり、入団を決めました」と回想する。
以来、激務に耐えながら、班長や副分団長などの要職をこなし、いつの間にか在籍45年という歳月が過ぎ去っていた。その間に各種の表彰歴があり、分団長時代には消防庁長官賞の受賞歴も。地道な活動が今回の叙勲に結びついたといえる。
今でも思い出すのが、入団の年に発生した静岡市内のキャバレーでの大火災だ。初出動で緊張の中、ネオンが大音響とともに倒壊する瞬間などの光景を思い出す。「キャバレーの建物内に入っていったまま、2人の消防署員が不明になった。不安に包まれました」と小林さん。貴重な経験を踏まえ「当たり前のことですが、火災は予防が第一です」と表情を引き締めた。
年に一度の慰安旅行が楽しい思い出になっている。「分団長時代、業務を熟知した団員たちに支えられ、大変感謝している」と仲間とのきずなの大切さを説く。それだけに「これからも私の経験が役に立つならば協力していきたい」と話す。