ホンマタカシが語るサンローランのアートプロジェクト「SELF 07」。
6月9日より、世界6都市で開幕した〈サンローラン〉のアートプロジェクト「SELF 07」。2018年にスタートした「SELF」は、クリエイティブ・ディレクターのアンソニー・ヴァカレロがキュレーションを務め、アーティストの視点を通してサンローランが内包する多様性を表現し、観る者の自己表現や個性を刺激しようとする試みだ。
7回目となる「SELF 07」では、ヴァカレロがマグナムフォトと共に、東京、ニューヨーク、パリ、ロンドン、上海、ソウルの6都市で、各都市との強い結びつきを持つ写真家を選出。東京ではホンマタカシが選ばれ、〈渋谷区立宮下公園 芝生ひろば〉に「都市とファッション」をテーマにしたインスタレーションが登場した。
渋谷の高層ビル群を見渡す芝生ひろばに出現したのは、周囲に鏡面を張り巡らせた円形の構造物だ。中に入ると、壁半分にカメラオブスクラで撮影された汐留のビル群のイメージが張り巡らされ、もう半分には高速道路や高層ビルなどホンマの東京をテーマとした写真にしばしば登場するイメージと、モデルが〈サンローラン〉を着用したファッション写真が交互に貼られている。
「東京の全てを写すことはできないけれど、自分にとって一番アイコニックな場所と、自分がいつも撮っている人々を撮影しました」とホンマは言う。
鏡面に都市の風景が映り込み、そしてその中に都市を写したイメージが出現する様子を、ホンマは、缶詰の中に宇宙を閉じ込めた赤瀬川原平の『宇宙の缶詰』に喩える。
「鏡面の展示空間はサンローランからの提案ですが、結果として外の景色を中に閉じ込めることになり、赤瀬川さんの缶詰を思い出しました。公園の入り口にある建物〈RAYARD MIYASHITA PARK〉の屋外広告や、渋谷駅のハチ公口周囲のサイネージにも今回のプロジェクトのビジュアルが現れますが、都市の中に都市の風景写真が紛れ込むのも面白いですね」
世界6都市で同時開催される今回のプロジェクトについてホンマは、「東京の展示は6分の1でしかないから、オンラインで他の都市の展示も観て欲しい。6都市がミックスすることで完成するインスターション」という。東京での「SELF 07」プロジェクトは、6月12日まで〈渋谷区立宮下公園 芝生ひろば〉にて、そして6都市の展示は〈サンローラン〉のサイトにて公開される。