リサ・ラーソンの日本初公開作品からわかること。松屋銀座「リサ・ラーソン展 知られざる創作の世界─クラシックな名作とともに」レポート
1931年生まれのリサ・ラーソンは現在91歳。高齢により来日が叶わなかった本人に代わり、長女のヨハンナが開会式に登場し、3年ぶりに開かれた個展の喜びを次のように話した。「日本の皆様が母・リサの陶芸に興味を持ってくださっていることに心を動かされ、光栄に思っています。今回の展覧会では、弟のマティアスが貯蔵庫に眠っていた宝物の作品を見つけ出す本当にすばらしい仕事をしてくれました。そして美術史研究家のルーヴェ・イョンソンさんとともに作品をセレクトし、テーマにそってキュレーションを行いました。今回ルーヴェさんがリサの制作方法やモチーフを分析してくださったのでリサのライフワークが理解しやすくなっていると思います」。スピーチは「ありがとうママ、あなたのつねに湧き上がる想像力と制作意欲に感謝します」と、母・リサへの感謝の気持ちで締めくくられた。
会場は9章構成。ラーソンはその作家人生でシリーズ生産向けのデザインモデルを数多く手がけてきた。代名詞はやはり動物のフィギュアだが、1章では動物に加え女性、子供をかたどった名作が集合。コレクターなら誰もが知るであろう希少アイテムも展示される。
そうした「すでに知られているラーソン」ではなく、「まだ知られていないラーソン」に光を当てるのが本展が目指すところでもある。2章では1954~80年、ラーソンがスウェーデンを代表する食器ブランド「GUSTAVSBERG(グスタフスベリ)」で筆による装飾に従事していた頃の器や花器。3章ではスウェーデンの家屋をモチーフとしたレリーフなどが紹介される。ユニークピース(一点もの)の作品からは手仕事の痕跡が感じられ、アーティストかつ職人とも言うべきラーソンの側面を浮かび上がらせる。また、その瑞々しい創造の萌芽はすでに学生時代から健在であったことが、6章に並ぶ初期作品からわかる。
ラーソン作品は世界のなかでも特に日本に多くのファンがいると言われるが、本国スウェーデンではどうだったのだろうか? 5章「マスメディアの中のリサ・ラーソン」では、50年代のデビュー以来、マスメディアに頻繁に登場した大スター・ラーソンの一面が垣間見える。自身の作品だけではなく、家族や日常生活にまでカメラがフォーカスされている様を見ると、さながら現在のライフスタイルモデルのような存在だったことがわかる。