高みに挑み、文楽を未来へつなぐ 人間国宝に文楽人形遣い・吉田玉男さん
■盟友・桐竹勘十郎さんから「おめでとう」
「まさか(人間国宝の)認定をいただけるとは思ってもいませんでした」と率直な思いを明かす。長くともに切磋琢磨(せっさたくま)してきた人形遣いの盟友、桐竹勘十郎さんに報告すると「おめでとう」という言葉を3回贈られたと明かし、「それが何よりうれしかった」。
立役(たちやく=男役)の第一人者。「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」の由良助(ゆらのすけ)、「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」の菅丞相(かんしょうじょう)、「心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)」の治兵衛など、当たり役は数多い。どれもが文楽を代表する役どころで、輪郭が大きく品格のある芸は現代文楽の大きな魅力だ。
大阪生まれ。中学生のとき、アルバイトで文楽公演の雑用を手伝ったのをきっかけに、戦後を代表する名人、初代吉田玉男に入門した。その芸を継承しながら立役ひと筋に歩み、師に続いての人間国宝になる。
「文楽は世襲制ではなく、誰もが入って活躍できる世界。若い人にはどんどん来てもらいたいし、今後は後進の指導にもさらに力を入れていきたい」。自身の歩みと重ね、文楽の未来に思いをはせる。
10月に70歳を迎える。「60の芸、70の芸、80の芸というのがある。僕もまだまだこれから」と、はるかな芸の高みを目指し続ける覚悟だ。(亀岡典子)