福島・双葉へ風よ吹け 和合亮一さんが新作詩 町政70年式典で披露
今の町政が始まって70年を記念した式典で披露した。町役場に勤める高校時代の同級生、本田和美さん(54)に声をかけられ、9月ごろから町内の中間貯蔵施設や動物に荒らされた住民の家などを訪れ、言葉にしていった。
本田さんは「情景が目に浮かび、双葉の希望をうたう作品になってうれしい」と喜ぶ。町は詩の全文や、和合さんが朗読する様子を撮影した動画を、町のホームページで公開する予定だという。
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和合さんは取材に応じ、自作に込めた思いなどを語った。原稿用紙約50枚に及んだという詩の一部と共に紹介する。
風はどこに
私たちを/みちびく/
風はどこに
冒頭はこう始まる。町を訪ねた際に感じた風が印象的で、町の置かれた状況を「風」に託したという。
大男は 丘に座り/たくさんの人々に/告げた
町は俺のものだ
誰も/入るな
真っ暗な町内を車で走っているときに、目に入った福島第1原発が巨人のように見えたという。
詩の前半は震災のつらい過去をたどり、後半は希望が芽生える。
夕陽を浴びた/ハーモニカが窓辺にある
実際に小学校跡を訪れたときの教室の光景で「ハーモニカが新しい息吹きを吹き込んでほしそうに思えた」。
風よ
吹け
双葉へ
明日へ
詩はこう結ばれる。和合さんは「土地の名には魂が宿っている。双葉は新芽が開いていくイメージ。たくさんの人に広がってくれたらうれしい」と語った。
式典は、1951年4月に合併で現在の町政が始まったのを記念して町産業交流センターで開かれた。町が主催。本来なら昨年が70周年だが、今年8月に町の一部の避難指示が解除され、「町民ゼロ」の状態が解消されるのを待っての開催となった。
功労者の表彰や記念のアトラクションなどが行われた。特設ステージでは、和合さんとフリーアナウンサーの大和田新さんとのフリートークがあった。また、標葉(しねは)せんだん太鼓や民謡同好会など、原発事故後も避難先などで集まり、練習を重ねてきた地元の団体が日ごろの技を披露した。