「第2言語だから繊細に」 グレゴリー・ケズナジャットさん
候補作『開墾地』(講談社)では、生まれ育った米国から日本の大学へ留学した主人公の男性が久しぶりに実家へ帰省する。英語と日本語との間を行き来する主人公の思索。イラン出身で血縁関係のない父の人生とペルシャ語の懐かしい響き…。異なる言語と文化のはざまで生きる人々の揺らぎを静かな筆致で描いた。
自らの歩みが物語の根底にある。作品と同じく、母は米国生まれで、父はイラン出身。異国での暮らしが長くなる中、将来のこともよく考えるようになった。
「この先も自分は日本に住み続けるのか。もしも亡くなったら墓は? それに保険は?…。イラン出身のお父さんも同じことを考えたかもしれない。だったら小説でそれらの問題を探ってみようと」
故郷・米南東部サウスカロライナ州の街には日本企業も多かった。高校時代に「文字を見てもどう読むかわからない。単純な好奇心から」外国語の授業で選択したのが日本語との出合い。勉強の一環で始めた作文や日記ではあきたらず、虚構を交えた小説を書くようになっていた。
昨年末、自作が載った文芸誌を持って帰国。作品を見せても日本語を読めない親は不満げだった。「英語で書いた方が親は喜ぶ。でもこれからも日本語で書きたい。いろんな人が使った方が言葉の多様性は増すと思う」