広島の街並みを一望できる〈おりづるタワー〉で、平和への願いを込めて9人の作家が描く壁画とは?
現在、ここで9名のアーティストによる公開制作プロジェクト「WALL ART PROJECT "2045 NINE HOPES"」が行われている。〈おりづるタワー〉の1階から屋上までをつなぐ螺旋状のスパイラルスロープ「散歩坂」にある、約4メートル×24メートルの壁面を大型キャンバスに見立てて壁画を描くというものだ。戦後100年となる2045年の節目に向けて、各作家たちがそれぞれの願いを込めて制作に励んでいる。公開制作は4月26日まで行われ、4月29日に完成する予定だ。
作家はいずれも広島にゆかりのある人たちだ。広島県尾道市出身の山本基は塩による迷路の作品で知られている。近年では壁や床に迷路のモチーフを描く作品も制作している。人はどこから来てどこに向かうのか、その迷路のような道筋を想起させる。
同じく広島県出身の三桝正典は「ジャパニーズ・モダン」をテーマに寺社や茶室などの和の空間を舞台に襖絵や掛け軸を発表してきた。〈おりづるタワー〉では2羽の白いカラスを描いている。「白いカラス」は原爆など、あり得ないことの象徴なのだという。どんなに信じられないことが起きても乗り越えられる、という思いを込めている。
田中美紀は人々の夢やビジョンを可視化、絵画化する「ビジョンプロジェクター」として活動している。白い壁の中心には乳母車があり、その周囲にはていねいに描かれたさまざまな花が舞う。この花は彼女が考えた366日分の誕生花なのだという。すべての人の誕生日を祝い、新しいものが生まれてくることを願って制作されている。