若手作家のオークションも 京都市が文化芸術支援へ寄付サイト開設
京都市京セラ美術館(左京区)で5月29日夜、アート作品のチャリティーオークションが開かれた。約170人の美術愛好家やコレクターが参加。高級ディナーを楽しんだ後、出品作品を吟味して入札額を競った。
オークションの目的は若手芸術家の支援。昨春に続く2回目の開催で、趣旨に賛同した著名作家24人が出品した。売り上げの半額が作家に入り、残る半額から経費を除いた収益で、同美術館が若手らの作品展などを開く仕組みだ。この日は、現代美術家の村上隆さんの作品が最高額の2400万円で落札されるなど、全体で約6300万円を売り上げた。
市は5月末、新たに市内の文化芸術への寄付を募る専用サイト「Kyoto Art Donation(キョウト・アート・ドネーション)」も開設した。京都芸術センターや市交響楽団などの美術や音楽から、市指定有形文化財の修理、市内史跡や名勝の保全といった文化財や伝統芸能まで、市の文化芸術に関する施設や事業が並び、希望者が寄付先を選ぶことができる。
オンラインでいつでも申し込み可能で、個人からの寄付金はふるさと納税の対象として税金が控除される利点もある。寄付だけでなく、ボランティアなど参加による応援の仕組みも広げる方針だ。
文化芸術支援に特化したオークションと専用サイトは、全国でも異例の試み。門川大作市長は「文化芸術都市の京都ならではの取り組みだ」と胸を張る。
◇背景にコロナ禍の自粛ムード
こうした施策の背景には、コロナ禍の深刻な爪痕がある。「不要不急」という言葉が文化や芸術に向けられ、集客イベントの自粛や中止が求められた。市が2020~21年に2回、市内の芸術関係者約1200人を対象に実施したアンケート調査では「創作発表の機会が失われた」との声が多く、「100万円以上」の減収を訴える回答が4割を超えた。
一方、市は21年度の予算編成で大幅な財源不足があるとして「財政破綻の危機」を訴えた。文化振興関連予算はコロナ禍前に編成された20年度の76億円から、23年度は60億円に減少。行財政改革の一環として、市民に親しまれていた音楽イベント「円山コンサート」や「市民ふれあいステージ」を廃止した。
財政難の中での文化芸術支援策として、市は21年に寄付を原資とした補助金制度を開始。過去2年間で約2億8000万円の寄付が集まり、75件の事業を補助した。今後はオークションや専用サイトの取り組みもさらに拡大し、民間資金で毎年1億~2億円の財源確保を見込む。
「苦肉の策」の側面もある市の取り組みだが、コロナ禍や人口減少などで各地の文化芸術が資金難に直面する中、独自の工夫として注目も集めている。文化庁は市の施策も参考に、文化芸術への寄付促進実証事業を23年度予算の概算要求に盛り込んだ。国レベルでは実現が見送られたが、市文化芸術企画課は「社会全体で文化芸術を支えることが重要。その仕組みを市が中心となって確実にしていきたい」と意義を訴えている。