近江人巡り 「冬の日の幻想」出版した宮下和夫さん
これまでに書いた随筆、評論、小説を収録した「冬の日の幻想」(162ページ、定価1430円、幻冬舎)を著した宮下和夫さん(85)=ペンネーム・茶井幸介(ちゃいこうすけ)、大津市日吉台。滋賀の文学創作の気運を盛り上げるとともに、中央文壇に対し、滋賀での文学活動の独自性を主張する「滋賀作家クラブ」の会長も昨年4月から務めている。
京都生まれ。中学時代から本を読むのが好きだった。京都商業高校時代には文芸クラブを立ち上げ、小説、随筆を集めた同人誌「文芸クラブ」を発行した。ペンネームは好きなロシアの作曲家、チャイコフスキーからとったもので、高校時代から使っている。大手生命保険会社に入社後は文芸活動から離れていたが、退職後、文芸の〝虫〟が騒ぎ始め、市役所に問い合わせて滋賀作家クラブを紹介してもらった。
「冬の日の幻想」には、これまで書いた11作品を収録した。クラシック音楽、ゴルフ、野球、サッカー、囲碁、マージャン…趣味は多彩で、作品もバラエティーに富んでいる。例えば「イチローの大記録に寄せて」は―。
「多くの記録を作ったイチロー選手だが、いつも『日米通算』といわれていた。しかし、2004年に年間安打記録262本を打ち立てた。大リーグ選手として文句なしの大記録。イチロー選手の評論は5本書いているが、この話は載せたかった」
「ゴルフの起源と競技の基本、そして奇跡の十八番ホール」は―。
「ゴルフ歴は60年くらい。今も月に1回、コンペに参加し、滋賀県甲賀市のメイプルヒルズゴルフ倶楽部でラウンドしている。よって、このゴルフの話も選んだ」
最後に収録された作品は本のタイトルにもなっている「冬の日の幻想」。金融機関に入社して3年目の男性会社員の恋と決別(失恋)を描いている。
「滋賀作家クラブに入って間もなく書いた作品。結婚前の私の実話に近いことを小説にした。特別の思い入れがあった」
これまでに書いた作品は40ある。
「出版社には40作品すべてを送ったが、『初版にしては多すぎる』といわれ、11作品に絞った。書き下ろしは年齢的にも無理だが、残りの作品も今後、チャンスがあれば修正して出版したい」
意欲満々である。(野瀬吉信)
■滋賀作家クラブ 昭和36年結成。4カ月に1回同人誌「滋賀作家」を発行。今年6月に通算150号を発行する。現在の会員は24人。会員資格は「会費を払えばだれにでも与えられる」。毎月第1土曜日に大津市生涯学習センター(大津市本丸町6―50)で、例会を開催。「入会希望者は一度見学にきてほしい」と宮下和夫会長はいう。