水谷太郎「淼/びょう」展、ベルリンで撮影された未発表の新作を発表
水谷は1975年、東京都生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業後、ファッション、カルチャーの誌面上で実験的な写真表現を追求、以後、ファッションブランドのキャンペーンやアーティストポートレイト、音楽、コマーシャルのフィールドを中心に、写真、そして映像表現を展開している。また、コミッションワークと並行、あるいは間接的な関係から生み出される、写真家自身の作品も継続的に発表している。
本展「淼/びょう」では、2022年冬のドイツ・ベルリンで撮影された未発表の新作を発表。一見、印象派の絵画のようにも見える水面のモチーフは、写真家の目─レンズが運河に映る歪んだ波の反射を、サイケデリックなイメージとしてすくい上げたもの。水谷は、撮影した画面の反転という最小限の操作によって、具象と抽象、意識と無意識、現実と虚構の間を提示する。メディア=媒介としての写真は、ある具体的な対象を写すとともに、それではないなにか/どこかへの変換可能性を孕んでいる。水谷は、写真が持つイメージの二相性を、曖昧で不定形な画面を通して差し出そうとしているのかもしれない。