自虐交じりのコメント連発しながらも「虎視眈々」、広瀬八段の勝負師魂
9月6日に行われた王位戦第5局だ。王位を保持する藤井聡太竜王に豊島将之九段が挑戦したシリーズ。藤井竜王が防衛に王手をかけて迎えた2日目の解説を、今期の竜王戦で藤井竜王に挑戦する広瀬章人八段が担当したのだ。
ツイッター上でも「竜王戦の偵察だ」などと話題となったこのキャスティング。「広瀬八段が藤井竜王のことをどうみているのか知るには絶好の機会! 読売新聞オンラインの将棋担当として、これは重要な取材であり、仕事だ」と勝手に理屈をつけ、朝からスマホにかじりついて観戦させていただいた。
で、以下が中継を見る中で出てきた竜王戦についての広瀬八段の主な発言。
「(藤井竜王とタイトル戦で)当たるとは思っていなかったです。最近、パッとしなかったんで、タイトル戦に出るイメージがなかったですし」
「僕より強い人が(タイトル戦に)出て、(藤井竜王は)全部はねのけている。どうなんでしょう。一応、頑張ります」
「(藤井竜王と)戦って強さを再認識する可能性が高いかもしれません。今日も再認識して帰る可能性が高いですけど……」
「以前は2日制で封じ手の後、関係者のみなさんとの食事会があったりしましたけど、コロナ禍でいまは部屋に戻って缶詰め状態。(大好きなサッカーの)プレミアリーグや(麻雀の)Mリーグだけが見られる専門番組とか作ってくれればいいんですけど。いろいろ久しぶりのことが多くて大変です」
おおらかなキャラクターから「鷹揚(おうよう)流」などと呼ばれることもある広瀬八段。ちょっとだけ自虐を交えた、つかみどころのない言葉は、らしさ全開と言ったところだろうか。
前期の竜王戦、3連覇を果たした王位戦と、確かに2日制の番勝負での藤井竜王の強さは半端ない。今期の竜王戦でも、下馬評では「藤井有利」の声が多いのもうなずける。ただ、個人的には、広瀬八段のぶっとい肝っ玉と、勝負師としての秘めた熱さが、竜王戦の歴史に新たなドラマを生むのではないかと勝手に想像している。