世界遺産にもなった〈国立西洋美術館〉の舞台裏へ!
Q 実際に撮影をした感想は?
〈国立西洋美術館〉は1959年、仏政府から日本へ寄贈返還された「松方コレクション」を保存公開するために設立され、現在では絵画、彫刻、素描、版画、写本、工芸など約6000点の作品を所蔵しています。研究員がこれらの作品を丁寧にチェックして保存修復に取り組む様子、どのように展示するのかを議論する様などすべてが緊張感に満ちていました。美術館が持つ複雑な機能と研究員の高度な知識と技術に圧倒されました。
Q ロダンの彫刻が丁寧に保護されて移動するシーンもあります。
休館中はル・コルビュジエの設計意図が正しく伝わるように前庭のリニューアル工事が行われました。またロダン作《考える人》《カレーの市民》の位置も当初の状態に戻されています。研究員の指揮監督のもと工事が進む様は見応えがあるシーンとなりました。
Q この映画に「わたしたちの」とつけたのはどうしてですか。
映画では特別展の開催資金を新聞社、放送局に依存していること、その歴史的経緯と一長一短を関係者の証言で描き、このシステムの将来的な継続性について問いかけています。また、国際的に日本の文化予算は少ないうえ、残念なことに減らされる一方の現状があります。コロナ禍で不要不急のものなのかが問われたこともありましたが、言うまでもなく美術や芸術は人間が生きていくうえで極めて大切なものです。ひとりひとりが気概をもって文化芸術を支える、わたしたちが美術館を支えなければ、との思いをタイトルに込めました。美術館の舞台裏を楽しみつつ、その課題と将来像を問いかける作品に仕上がったと思います。
製作・監督・撮影・録音・編集:大墻敦。協力:国立西洋美術館。105分。(c) 大墻敦。2023年7月15日より、シアター・イメージフォーラムほかにて全国順次ロードショー。