芦沢啓治に聞く、佐賀の名建築5選【佐賀シティガイド】
温泉の入口には、天平式楼門と呼ばれる釘を一本も使用せずに建設された楼門が。そこを通り現れる新館には浴場があり、現在は資料館となっている。
「辰野さんにしては珍しく、純和風の様式です。ただ、東京駅のドームを連想させる、浴場の八角形の天井や、洋館のようなシンメトリーなファサードなど、所々に“辰野さんっぽさ”があるのが興味深い。洋風建築と和風建築、双方を100年以上前に手がけた辰野さんはやはり稀有な存在だと感じますね」(芦沢さん)
〒843-0022 佐賀県武雄市本町7425。TEL 0954-23-2001。火曜休み。入場無料。楼門2階の見学会は毎週火曜日を除く全曜日に実施。見学時間9時~10時(受付9時30分まで、見学料500円)。
九州でも有数の温泉地として知られる嬉野市。その場所で創業100年を誇る〈大正屋〉は、住宅設計の名手として知られる吉村順三が手がけた老舗旅館だ。きっかけは同じく吉村設計の旅館〈俵屋〉に感動した当時の社長が、ラブコールをしたことから。約15年の歳月をかけて増改築を行い、旅館は緑が生い茂る中庭を3つの棟が囲む現在の形に。日本建築とモダニズムを融合した吉村らしい空間が生まれた。