安本亀八作の肖像、内部に文字?新たな発見も 旧家で調査・撮影
亀八は、興業用の「生き人形」(生きているように等身大で表現した人形)で知られる。30~40代の約10年間は三重と奈良などに滞在し、商家の当主などの肖像を造った。現存する亀八作の肖像は全国で20点あまり。名張は8点が残る「亀八タウン」という。名張では約半世紀前に郷土史家が調べた記録があり、2019年に塩沢教授が本格的な学術調査を始めた。
17日は、3月の調査で、亀八の名が朱筆で記された像の記録撮影も行われた。亀八の名が書かれた肖像は全国で5例目、名張では初めてで、「亀八の作」と明確に証明される重要な例という。撮影はさまざまな角度から行われ、塩沢教授は「(立体としての造りを明らかにして)彫刻史的な判断をするために大切な記録」と語る。
像は寄せ木造りで高さ約22センチ。座った姿で、顔つきや髪、羽織などが精巧に表現され、写真が普及していない時代に当時の人の姿を記録した貴重な資料でもある。亀八の名は像の下部の裏にあり、「奉慎写(つつしんでうつしたてまつる) 肥後熊本住細工人 安本亀八光政」と書かれている。
この日の撮影では、新たな発見もあった。取り外しが可能な首を外して撮った際、胴体の内部(底板)に2行ほどの文字らしいものが確認された。塩沢教授は「文書の専門家にみてもらう必要があると思う。板を他のものから転用した可能性も含めて調べたい」と話した。