12月26日「ボクシング・デー」って何の日? ボクシングとは無関係、その起源は?
ボクシング・デーの正確な起源については、歴史家の間でも意見が分かれているが、英国に根付く慈善や善意の伝統から発展したと考えられている。特に、12月26日に祝われるキリスト教の祝日「聖ステファノの日」との関連が深いようだ。
キリスト教会の最初期に助祭を務めた聖ステファノは、西暦36年ごろ、信仰を理由に処刑され、キリスト教における最初の殉教者とされている。聖ステファノは貧しい人々に奉仕していたことで知られ、伝統的に、聖ステファノの日は慈善事業や施し物の配布などが行われて祝われる。
「ウェンセスラスは良い王様」というクリスマスキャロルを聴いたことがある人は、王が貧しい農民に施しをするため、深い雪の中を歩く場面を思い浮かべるかもしれない。ウェンセスラス王は10世紀に実在したボヘミア公バーツラフ1世(聖バーツラフ)がモデルで、「聖ステファノの祭日」である12月26日に高貴な行いをしたという言い伝えがある。
その慈善の伝統が「ボクシング(boxing)」と呼ばれるようになった経緯については、いくつかの説がある。一部の歴史家は、キリスト教の初期にあたる西暦2~3世紀、アドベントと呼ばれるクリスマス前の期間だけ、教会に設置された寄付の「箱(box)」にちなむ言葉だと考えている。クリスマスの翌日、その箱が開けられ、貧しい人々にお金が配られた。
もう一つの説は、16世紀ごろに生まれたある習慣と関係がある。労働階級の人々は12月26日、1年間仕えた人たちからクリスマスの「箱」、つまり、チップをもらっていた。
この習慣は広く行われていたが、万人に愛されるものではなかった。例えば、随筆家のジョナサン・スウィフトは1710年、「私はクリスマスの箱によって破滅することになるだろう。コーヒーハウスの悪党どもは税金を引き上げ、皆が1クラウンを渡している。恥ずかしながら、私も渡した。さらに、ポーターなどに半クラウンずつ渡している」と不満を述べている。
ボクシング・デーの起源とされているものはもう一つある。19世紀、ビクトリア朝の英国で、社会階層が変化するなか、使用人が自分の家族との時間を犠牲にして、クリスマスに貴族の主人に仕えるようになった習慣と関連づけられている。
クリスマスの翌日、主人が使用人にめったにない休みを与え、クリスマスのごちそうの残りものとプレゼント、チップを持たせて家に帰らせていた。使用人が帰宅している間、貴族と婦人たちは残りものを食べていたと、歴史家のアンドレア・ブルームフィールド氏は書いている。