祈りを込めて魂を癒すための絵を描く 現代アーティスト・小松美羽〈AERA〉
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灼熱(しゃくねつ)の陽光が照りつく野外ステージに金地のキャンバスが立ち並ぶ。白装束をまとい、座禅を組んで瞑想(めいそう)する画家の姿。すっと立ち上がると、手にとったアクリル絵の具のチューブをキャンバスに絞り出す。アクアブルーと黄緑色の絵の具がほとばしり、その手で筆のごとく一気に描き始めた。
今年6月25日、川崎市岡本太郎美術館(神奈川県)で「小松美羽展」が幕を開けた。銅版画家としてスタートし、アクリル画、有田焼など独自の表現力を国内外で注目される現代アーティストの小松美羽(こまつみわ)(37)。有田焼の狛犬(こまいぬ)作品《天地の守護獣》が大英博物館に収蔵されており、VR作品《祈祷=INORI》は第76回ベネチア国際映画祭にノミネートされた。個展に先駆け、ライブペインティングに臨んだ小松はオレンジ、赤、ピンクと極彩色(ごくさいしき)の絵の具を塗り重ねていく。まなざしは揺るぎなく、かぼそい腕の動きは力強い。天空とつながるような白い線を筆で仕上げると、祈りを捧げる。
「途中からすごく眩暈(めまい)がして、記憶もないんです。岡本太郎さんの作品から伝わるエネルギーが強かったので、圧倒されながら何とか描いていて……。少しでも多くの人の魂が救われますようにと祈りつつ、初めて岡本さんに挑んだ気がしました」
岡本太郎は日本各地の聖地を訪れ、神事や遺跡にまつわる「神秘」を追い求めた。小松もまた、聖なる領域を守る神獣(しんじゅう)や寺社の狛犬などを描いてきた。自分の役割は絵を通して「目に見えない世界とこの世界をつなげること」という。小松は幼少の頃から、見えざるものの目を感じていた。
「小さい頃から自然の中にいると何かに見られている感じがありました。だから、山を汚しちゃいけない、気を付けて入らなければいけないと。そうした畏怖(いふ)の心が大事だと思っていたのです」