スタイルのあるリノベーション。|建築家・永山祐子
「この開口部のおかげで、一日中光が入って気持ちいい。ただ、壁まで明るい白にするとまぶしすぎるので、トーンを落としたモルタルで仕上げました。明暗のコントロールは、人が過ごす場所をつくる上でとても大事。単調にならないよう、モルタル独特の塗りムラも生かしています」
実はこの壁も解体時はボロボロで、「元のモルタルをはつったら、廃墟みたいな壁が出てきた」そう。大部分は時間をかけて塗り直したが、階段室だけはあえてゴツゴツした壁を残してみた。いずれはアートを飾り、ギャラリーとして楽しもうと思っている。
一方、テラスと反対側のスペースにあるのは、「衣服や布団から子供のおもちゃまで、ほとんどのモノがここに収まる」というウォークインクローゼット。その手前には大きな建具も設けられている。フロアを部分的に仕切って家族の寝室をつくるこの建具が、なにしろ非常に美しく、やわらかな木目がグラフィカルに走るさまは1枚のアートのよう。北海道産のシナ材突板を斜めに張り合わせたもので、モルタル色の空間にやさしい質感を添えている。