木の建材屋〈ティンバークルー〉のポップアップストアが開催。“デザインしないデザイン”とは。
〈代官山 蔦屋書店〉の入り口前に置かれた大きな丸太のような木の塊。犬の散歩をする近所の人が自然に腰掛け、その手触りを楽しんでいる。実は、この塊も〈ティンバークルー〉の展示のひとつ。そこで一休みをしていざ中に入ると、さまざまな木材で作られたスツールやフレーム、器などのプロダクトが並び、森に入ったような感覚になる。
多くのアパレルショップや商業施設の内装を手掛けるこの会社が、現在の屋号で正式に始動したのは12年前。会社の代表を務める小久保圭介は、22年前に造園業からキャリアをスタートし、木に関してはまったくの素人だったという。
「造園でウッドデッキなどを作っているうちに木に触れることが多くなり、だんだんと魅了されていきました。だから、自分はどこかで木工を習ったとかではなく、道具の使い方からすべて独学なんです。木工一筋の職人さんからみると、道具の使い方が間違っていると言われるかもしれません。でも、それも自分たちの個性だと思っています」
仕事の主流はフローリングや壁を作ること。木材に塗装を重ね、エイジング加工を施し、空間に独特の雰囲気を醸し出す。多くのインテリアデザイナーが『彼らと仕事をしたい』と思う大きな理由に、微妙なニュアンスを汲み取ってくれるから、というのがある。例えば “古い小学校の体育館の床のような仕上がりにしたい” というオーダーにも試行錯誤をしながら応じ、期待以上のものに仕上げる。たとえ手間や多少のコストがかかっても、納得がいくまで妥協しない。その根底にあるのは“自分たちらしくものを作る”というポリシーである。
「それは自分たちが楽しむこと」だと、小久保は言う。マスな市場が求めるものは、他の会社にまかせればいい。それよりも自分たちが使いたいか、欲しいと思うかどうかという感覚を大切にしている。展示会場のどこを見渡しても、唯一無二のものしか並んでいないのは、そのポリシーに由来しているのだ。