「初めて」がいっぱい、棋聖戦「西海対局」同行記[千春&明夏の女流棋士ここだけの話]
長崎県西海市の「オリーブベイホテル」で行われたこの対局、私は記録係として同行させていただきました。記録係とは文字通り、対局者のすぐそばに座って、対局の棋譜をつける人のこと。世界で唯一の戦いの記録を後世に残す立場な上、勝敗を左右する持ち時間の管理までしなければなりません。ほんとうに責任重大です。
だから、タイトル戦の記録を担当できるのは、プロの棋士のみ。基本、有志の若手棋士から選ばれます。私が所属する日本棋院関西総本部の場合、候補者は7人いて、順番に担当が回ってきます。タイトル戦の記録係は2人体制で、先日の棋聖戦では午前中は1時間半交代、午後は1時間交代、2日目の夕方は秒読みが始まりそうになったら、2人で一緒に記録をとります。
実は私にとって、2日制の碁の記録は今回が初めての経験。3泊4日の長崎出張はとにかく初めてのことばかりで、緊張と失敗の連続でした。
まず飛行機に乗るのが初めてで、恥ずかしながら母に空港まで送ってもらいました。それでも保安検査場を通過するまではドキドキ。空港では、第3局で大盤解説会の聞き手を務める安田明夏初段と待ち合わせをしていたのですが、彼女の顔を見て、初めてホッと安心できました。
オリーブベイホテルは地元の大島造船所の「迎賓館」的な存在で、宿泊させていただいたお部屋もこれまでお目にかかったことのないような、超ゴージャスなツインルーム。リアス式の美しい入り江が望める全面ガラス張りの浴室に至っては、いろんな機能がありすぎて、どこのボタンを押せば、ブラインドが下がり、どこをひねればお湯が出るのかわからず、安田初段にLINEで助けを求める始末……。結局、安田初段がフロントにいろいろ聞いてくれ、何とかお風呂に入ることができました。