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家族がそろった最後の朝食 被爆女性の体験、友人が絵本に
2022-09-29
家族がそろった最後の朝食 被爆女性の体験、友人が絵本に

 77年前、広島に投下された原爆で父と姉を失った女性の被爆体験を元に、友人で絵本作家の三枝三七子(みえだ・みなこ)さん(55)=長野県池田町=が絵本を制作した。当時6歳だった女性は、2018年秋に亡くなる直前まで、完成を心待ちにしていたという。生前の約束を果たした三枝さんは「戦争の傷痕は、直接けがをすることだけではない。普通の人の人生にどれだけ深く傷を残すのか感じてほしい」と話している。

 8月に出版された絵本のタイトルは「さいごのあさごはん」(未来舎)。千葉県内で語り部活動などをしてきた小野瑛子(本名・英子)さんが、1945年8月6日朝に家族そろって食べた最後の朝食に由来する。

 朝ご飯を食べ終えて自宅の水風呂で遊んでいた「わたし」は、原爆の閃光(せんこう)を目にする。爆風を受け、がれきに閉じ込められたもののすぐに助けられたが、翌日になると母は「わたし」を置いて、学校に行った姉ようこちゃんと父ちゃんを捜しに出かける。まるで「わたし」がいないみたいに。そして2人の死を知った母は、ようこちゃんが行きたがっていた宮島に向かう――。

 元になっているのは、小野さんが母山本信子さんの手記をまとめて出版した「炎のメモワール」だ。ハワイで生まれた日系移民2世の信子さんは、広島の惨状を世界の人に知ってもらおうと被爆2年後に英語で手記を書いた。米国の雑誌「TIME」に送ろうとしていたという。信子さんの死後、遺品から手記を見つけた小野さんは、母の願いをかなえるため冊子にして国際会議などで配った。

 小野さんが日本語に翻訳した手記には、信子さんの葛藤がつづられている。生き延びた後悔から、夫と長女の元に行こうと小野さんを連れて宮島に向かったこと。海に入って心中を図ろうとしたが、水の中で遊ぶ娘の姿を目にして「この子にも、生きる権利はあるのだ」と気付いたこと。生まれ育った愛する米国が家族の命を奪った苦しみや、原爆への憎しみも。

 水俣病などをテーマに絵本を手がけてきた三枝さんは、作品を読んだ小野さんから「私のことも絵本にならないかな」と制作を託された。手記に加えて生前に被爆体験を聞き取り、幼い子どもだった小野さんの視点から再構成することにした。昨年8月にインターネットで公開したところ約5万のアクセスがあり、紙の絵本として出版した。

 小野さんの長女(52)によると、被爆証言では姉の話を中心に語り、子ども時代の小野さんの気持ちに焦点を当てる機会は少なかったという。しかし、信子さんが命を絶とうとしたことは子供心に気付いていたといい、「幼い自分の気持ちを分かってほしいという気持ちが母にはあったと思う。ずっと抱えていた痛みに気付き、形にしてくれた」と喜ぶ。

 三枝さんは「お母さんは生き抜く努力をしたが、亡くなったようこちゃんを思い続け、絵本の中で小野さんと互いに見つめ合うことはない。生き残った人も傷を負ったことを知ってほしい」と語る。

 絵本は送料別で、税込み700円。販売サイト「クリーマ」(https://www.creema.jp/item/14405884/detail)から購入できる。信子さんの手記はホームページ(https://honoo-no-memoir.themedia.jp/)で公開している。【椋田佳代】

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/a271e699c4de3801e21dfc50f30ffa002a2451c1

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