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堀元 見 流行りのビジネス書と「論破」ブームが生み出す不毛地帯
2022-12-25
堀元 見 流行りのビジネス書と「論破」ブームが生み出す不毛地帯

※『中央公論』2023年1月号より抜粋


――著書『ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律』(徳間書店)は、自己啓発書などを読みまくり、そのエッセンスを示しつつ的確にツッコミを入れたユニークな一冊です。駄目なビジネス書を批判することの多い堀元さんですが、そのスタンスは昔からですか。


 いえ、僕も昔はビジネス書を好んで読んでいましたよ。特にイケダハヤトさんの『年収150万円で僕らは自由に生きていく』(星海社新書)には影響を受けましたね。馬車馬のように働くエリートたちは幸福を見失っている。それよりはごくミニマルな暮らしをしながら、年間150万円稼ぐほうがいい、と気楽な働き方をすすめる本です。今ではよくある主張のように聞こえるでしょうが、当時はとても新しかった気がします。帰省先から東京に戻る飛行機の中で、この本を読んだのをはっきり覚えています。僕は北海道の開業医の両親に育てられ、高校はなんとなく進学校へ行った。そして慶應義塾大学に入学している──。つまり自分は無難に生きていくのだろうなとぼんやり思っていたので、この本がとても刺さりました。

 内容よりも、その時に置かれている状況やメンタルが作品の受け止め方に大きく影響することはよくありますよね。イケダさんの本を読んだのは、東京という大都会に戻りながら自分の人生を見つめ直す高揚した時間だったので、何を読んでも響く状況だったのかもしれません。たとえば、その時に『はらぺこあおむし』を読んでいても、それはそれで感動していた気がしますね……。


――ビジネス書や自己啓発書にツッコミどころが多いと感じたきっかけはありますか。


 大学生になって、いろいろと本を読んでいく中で、だんだんと軽薄だなと思うようになりました。決定打となったのは、オンラインサロン「堀江貴文イノベーション大学校」(HIU)に入ったことです。

 僕は2016年に大学を卒業して、フリーランスになり、収入のあてもないので、ブラブラする日々でした。その頃は「人脈」が大事だと思っていたので(笑)、異業種交流会に顔を出していました。

「異業種交流会のパラドックス」と呼んでいるのですが、ああいう場には、当時の僕も含めて暇な人ばかりが集まってきがちです。会った人たちは皆、何かしらのオンラインサロンに入っていたと思います。その頃、なぜか僕を気に入ってご飯をよく奢ってくれるおじさんがいて、彼が「お金をあげるから、ホリエモンのサロンに入りなさい」と、2万円と消費税分を渡してくれました。それで2ヵ月間だけHIUに入ったんです。

 入会して驚いたのは、堀江さんのベストセラー『多動力』(幻冬舎)の「生みの親」を自称する人がたくさんいたことです。当時はオンラインサロン発のビジネス書がよく出ていて、『多動力』もその一冊でした。本の巻末には参加したメンバーの名前が小さな字でずらっと並べて書いてある。その人たちは書籍の成り立ちに少し携わったことで「生みの親」という気持ちを抱けるようになっているわけです。当然、「生みの親」たちは販促も頑張るわけですから出版社にとってはありがたいし、著者はサロンメンバーに対して「何かを生み出している雰囲気」を味わってもらえる。ウィン・ウィン・ウィンの関係ではあるのだけど、僕自身はそうした様子を見て、かなり滑稽だなと思いました。そう感じたのは大きな転機でしたね。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/c9ce5ab27eda90cc4ebb3b3e3032fd277a917830

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